高血圧

高血圧は言うまでもなく「血圧が高い状態」ですが、何が問題なのでしょうか? 最も身近な生活習慣病でありながら「サイレントキラー」とも称される高血圧について、「なぜ治療が必要なのか」を軸にわかりやすく説明します。
  • 2025/01/31公開

最初にまとめ

  • 高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状のないまま進行する病気です
  • 進行すると脳卒中・心筋梗塞・腎障害などを引き起こし、生命や生活の質に深刻な影響を及ぼします
  • 適切な管理によりリスクを最小限に抑え、健やかな日常を維持しましょう

診断基準

  • 診断基準には、家庭血圧と診察室血圧の2つがあります。

家庭血圧

  • 135/85mmHg以上

診察室血圧

  • 140/90mmHg 以上
  • 一般的に診察室血圧は家庭血圧より約5mmHg高くなることが知られていますが、個人差が大きく、20mmHg以上の差が見られることもあります。そのため、当クリニックでは家庭血圧を重視して診断を行います。

    高血圧治療ガイドライン2019でも、健康診断や診察で血圧高値を指摘された場合、まずは家庭血圧の測定を推奨しています

原因

  • 高血圧の原因には、加齢や遺伝など避けられない要因に加え、生活習慣や特定の疾患が関与します。
    これらのリスクを理解し、適切に管理することが重要です。

避けられない要因

  • 加齢
  • 遺伝的要因
  • 他の病気(内分泌疾患・睡眠時無呼吸症候群・腎疾患など)

生活習慣の影響

  • 塩分の摂りすぎ
  • 運動不足
  • 肥満
  • 喫煙・過剰な飲酒
  • 慢性的なストレス

特定の疾患

  • 甲状腺機能亢進症
  • 褐色細胞腫
  • クッシング症候群
  • 原発性アルドステロン症
  • 腎血管性高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 甲状腺機能亢進症
  • 褐色細胞腫
  • クッシング症候群
  • 原発性アルドステロン症
  • 腎血管性高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 加齢:血管の柔軟性を低下させ、血圧を上昇させます。
  • 遺伝的要因:生活習慣に関わらず高血圧を発症しやすくなります。
  • 塩分の摂りすぎ:体内のナトリウムバランスを崩し、血圧を上昇させる主要因です。
  • 運動不足 肥満:血管の機能を低下させ、心臓への負担を増やします。
  • 睡眠時無呼吸症候群:夜間の低酸素状態が続き、自律神経を介して血圧が上昇します。
  • 加齢:血管の柔軟性を低下させ、血圧を上昇させます。
  • 遺伝的要因:生活習慣に関わらず高血圧を発症しやすくなります。
  • 塩分の摂りすぎ:体内のナトリウムバランスを崩し、血圧を上昇させる主要因です。
  • 運動不足 肥満:血管の機能を低下させ、心臓への負担を増やします。
  • 睡眠時無呼吸症候群:夜間の低酸素状態が続き、自律神経を介して血圧が上昇します。

合併症

  • 年余にわたる圧ストレスは全身の血管にダメージを与え、生命や日常生活の質を損なう合併症のリスクを上昇させます
  • 急死のリスクがある合併症

  • 脳梗塞・脳出血
  • 脳動脈瘤・くも膜下出血

心臓

  • 心筋梗塞・狭心症
  • 心不全

大動脈

  • 大動脈瘤・大動脈瘤破裂
  • 大動脈解離
  • 甲状腺機能亢進症
  • 褐色細胞腫
  • クッシング症候群
  • 原発性アルドステロン症
  • 腎血管性高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • QOLを損なうリスクがある合併症

腎臓

  • 慢性腎臓病(CKD)・腎硬化症

下肢動脈

  • 下肢閉塞性動脈硬化症

脳梗塞・脳出血

  • 脳の血管の血流不足や破裂などで生じます。
    後遺症で以前通りの生活が継続できなくなったり、急死の原因になるなどします

脳動脈瘤・くも膜下出血

  • 脳の血管生ずるコブを脳動脈瘤といい、破裂するとくも膜下出血を生じます。
    脳出血や脳梗塞と比べても高い死亡率であることが知られています

心筋梗塞・狭心症

  • 心臓の血管の血流が不足して、心臓が必要とするだけの酸素が供給されなくなります。
    酸素が行き届かなくなった心臓の細胞が死んでしまうのが心筋梗塞で、しばしば急死の原因となります

心不全

  • 体が要求するだけの血液を心臓が送り出せなくなった状態です。
    血圧が高い血管に血液を送り出すために心臓が筋肉隆々として柔軟性が失われるなどして、ポンプとしての機能が損なわれた結果生じます。

大動脈瘤・大動脈瘤破裂

  • 脳の血管でできる脳動脈瘤に対して、胸部・腹部の大動脈に生ずるコブです。
    破裂は大出血に至ることが多く、死亡率は80〜90%程度と非常に高率です

大動脈解離

  • 血管(動脈)壁は3層構造ですが、その層構造が剥がれて大動脈解離になります。
    これにより大動脈から分岐する動脈の血流障害をきたし、脳梗塞・心筋梗塞などの重篤な合併症に至ります
    また大動脈破裂に至ることもあります。

慢性腎臓病(CKD)・腎硬化症

  • 腎臓は微細な血管の集合体で、血管のダメージによりその機能が低下します。
    透析導入の原因の1位として糖尿病が知られていますが、2位は高血圧です。
    一般的な透析は週3回の通院を要し、以前通りの生活の維持に支障をきたすことがあります

治療

なぜ治療するのか?

  • 治療の目的は高血圧により上昇した合併症のリスクを減少させることです。
    「服薬しても何も変わらない」という声を聞くことがありますが、高血圧の治療目的が症状の改善ではなくリスクの適正化であるという理解は非常に重要です。
    これまで通りの平穏な日常の継続が治療目的なのだと言い換えてもいいでしょう。

降圧目標

  • リスクの適正化は降圧目標を達成することで最大化されるため、降圧目標を把握しておきましょう。

降圧目標(mmHg)

  • 家庭血圧
  • 診察室血圧
  • 75歳未満の成人
  • 脳血管障害患者*1
  • 冠動脈疾患患者
  • CKD患者(尿蛋白陽性)
  • 糖尿病患者
  • 抗血栓薬服用中
  • <125/75
  • <130/80
  • 75歳以上の高齢者
  • 脳血管障害患者*2
  • CKD患者(尿蛋白陰性)
  • <135/85
  • <140/90

治療法

  • 治療法は生活習慣改善を主とした一般療法と、処方による薬物療法とに分けられます。

一般療法

  • 摂取制限…塩分、飽和脂肪酸・コレステロール
  • 摂取励行…野菜・果物、多価不飽和脂肪酸・低脂肪乳製品
  • 体重の適正化
  • 運動励行
  • 飲酒制限
  • 禁煙
  • ストレス管理

薬物療法(主なもの)

  • Ca拮抗薬
  • ARB
  • ACE阻害薬
  • 利尿薬
  • β遮断薬(αβ遮断薬)
  • 薬物療法は心臓・脳・腎臓など他の臓器障害のリスクや、禁忌の有無などを鑑みて適切な選択が必要です。
    しばしば1剤では降圧目標を達成できず複数種の降圧剤が必要になるケースがあります。

    また、高血圧治療ガイドライン2019発行後にARNIという新規カテゴリーの降圧剤が注目されるようになり、治療抵抗性や心不全を伴うケースでの有効性が期待されています。