百日咳

百日咳菌感染による特徴的な咳発作を伴う急性呼吸器感染症です。 しつこい発作性の咳と、これに続く笛のような呼吸音を伴うことがあります。 特に年少児は致死的な経過になることがあり注意が必要です。

最初にまとめ

  • 百日咳菌感染による特徴的な咳発作を伴う急性呼吸器感染症です
  • しつこい発作性の咳が続き、咳き込んだ後息を吸う時に「ヒュー」というような特徴的な呼吸音を伴います
  • 重症化リスクは年少児で高く、ワクチン施行前の死亡率は10%でした

感染

  • 咳やくしゃみにより飛沫感染や接触感染します。
    咳などによる百日咳菌の排出は、適切な抗菌療法がなされていない状況では咳の出現から約3週間続きます。

    感染力は非常に高く、1人の感染者は16〜21人にうつし得ると推計されます。

    年少児に好発しますが成人も感染し、近年小学校高学年から成人の感染が問題になってきています。
    これらの感染者自身の重症化リスクは低いのですが、重症化リスクが高い年少児への感染源となるためです。

ポイント

  • 咳やくしゃみに伴う飛沫感染や接触感染します
  • 年少者に多い感染症ですが、成人がかかることもあります
  • 近年小学校高学年で増えてきている兆候があります

症状

長い経過が特徴的で、
 
カタル期(2週間)
 
痙咳期(2〜3週間)
 
回復期(2〜3週間)
という具合に推移します。

なお、発熱はあっても軽度にとどまります。

①カタル期

  • 感冒症状、すなわちいわゆる風邪症状が主体です
  • 経過とともに咳が増えていきます

②痙咳期

  • 発作性のしつこい咳と、咳に続く笛のような吸気音
    (スタッカートレプリーゼ)
  • 咳に伴う嘔吐
  • 時に無呼吸発作

③回復期

  • 発作性の咳の頻度が減っていきます

診断

百日咳は長引くしつこい咳が特徴ですが、発熱が乏しいこともあり風邪などの後に長引く感染後咳嗽や、咳喘息・アトピー咳嗽といった咳を主徴とする疾患との鑑別に苦慮することがしばしばあります。
また痙咳期になってもワクチン既接種児や成人では特徴的な症状を欠くことが多く、臨床的診断はしばしば難渋します。

診断は特徴的な症状に基づく臨床的診断と、百日咳の急性感染を示す検査による検査診断があります。

臨床的診断

  • 咳(1歳以上は1週間以上続く咳

かつ、以下のいずれか1つを伴う

  • 発作性の連続性の咳欧
  • 吸気性笛声(whooping)
  • 咳嗽後の嘔吐
  • 無呼吸発作(チアノーゼの有無は問わない)

検査診断

  • 遺伝子検査:LAMP法(後鼻腔ぬぐい液)
  • 血清学的診断:抗PT-IgG、抗百日咳菌IgA,IgM
  • 菌培養:百日咳菌同定

確定診断

確定診断

  • 臨床診断例の定義を満たし、かつ検査診断陽性
  • 臨床診断例の定義を満たし、かつ検査確定例と接触があった例

治療

百日咳菌にはマクロライド系抗生物質が有効です。

カタル期に抗菌療法を開始すると痙咳期の短縮に寄与できるとされていますが、カタル期の確定診断は難しいの悩ましいところです。

ポイント

生後6ヶ月未満

  • アジスロマイシン

生後6ヶ月以降

  • エリスロマイシン
  • クラリスロマイシン

予防

  • ワクチンは有効性が高く、現在は乳幼児期に定期接種が実施されています。

    1950年の定期接種導入以前の日本では年間10万人以上の発生届がなされ、そのうち10%…すなわち年間1万人ほどが死亡に至ったとされています。
    直接比較できる統計はありませんが、現在の百日咳による死亡者数は年間1桁であると推定されます。

    以上よりワクチンの有効性は高いのですが、小学校高学年以降で発生が増えているのは4〜10年前後で有効性が低減するためと思われます。
    そのため日本小児科学会は
  • 5歳以上7歳未満
  • 11〜12歳
  • で3種混合による追加接種を推奨しています。

    タイミング的には1回目は就学前の麻しん風しん混合ワクチン接種時2回目は2種混合ワクチン接種時ということになります。
    いずれも任意接種の扱いになるため接種費用がかかる点にご注意下さい。

出席停止

  • 下記のいずれかを満たせば登校・登園可能
  • 特有の咳の消失
  • 5日間の適正な抗菌薬療法の完了