脂質異常症|芦屋市の内科 あしやサニークリニック内科

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態です。 自覚症状がないまま動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることから「静かなる危険因子」とも呼ばれます。 なぜ治療が必要なのか、その理由をわかりやすく解説します。

最初にまとめ

  • 脂質異常症は自覚症状がほとんどなく、知らぬ間に動脈硬化を進行させる病気です
  • 進行すると血管が狭く・詰まりやすくなり、脳梗塞・心筋梗塞・閉塞性動脈硬化症などのリスクが高まります
  • 適切な管理・治療は高まったリスクを低減することが知られています

目次

脂質異常症の診断基準|LDLコレステロール値と管理基準

高LDLコレステロール血症

  • LDL-C 140mg/dL 以上

低HDLコレステロール血症

  • HDL-C 40mg/dL 未満

高中性脂肪血症

  • 空腹時TG 150mg/dL 以上
  • 随時TG 175mg/dL 以上

主な脂質評価指標

脂質

はたらき

LDLコレステロール(LDL-C)

「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、動脈硬化の主要なリスク因子

HDLコレステロール(HDL-C)

「善玉コレステロール」と呼ばれ、LDLの除去を助ける

トリグリセリド(TG, 中性脂肪)

エネルギー源として使われる脂質の一種だが、過剰になると動脈硬化のリスクが上昇

脂質異常症の原因と生活習慣の影響|LDLコレステロールを増やす要因

高血圧の原因には、加齢や遺伝など避けられない要因に加え、生活習慣や特定の疾患が関与します。
これらのリスクを理解し、適切に管理することが重要です。

避けられない要因

  • 加齢
  • 遺伝的要因

生活習慣の影響

  • 不適切な食生活
  • 喫煙・過剰な飲酒
  • 運動不足
  • 肥満

特定の疾患

  • ネフローゼ症候群
  • 甲状腺機能亢進症
  • 糖尿病
  • 肝疾患

脂質代謝を悪化させる要因

要因

影響

加齢

閉経後の女性はエストロゲン低下によりLDL-Cが上昇しやすくなります。
男性は加齢によりHDL-Cが低下し、LDL-Cが上昇するリスクが高まります。

遺伝的要因

LDL受容体の遺伝的異常により、LDL-Cが著しく高くなる家族性高コレステロール血症(FH)という疾患があります。
また、遺伝性疾患としてのFHではなくても、家族内に脂質異常症の人が多い場合(家族集積傾向)には、LDL-Cが高くなりやすいことが知られています。
家族歴がある場合は、若いうちから定期的な脂質検査が推奨されます。

不適切な食生活

飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の過剰摂取、食物繊維不足がLDL-Cを上昇させます。
卵や内臓系食品にはコレステロールが多く含まれることが知られていますが、近年の研究では摂取制限の重要性は低下しています。

過度の飲酒

アルコールの適量摂取はHDL-Cを増やしますが、過剰摂取は中性脂肪(TG)の上昇を招きます。

運動不足

定期的な運動はLDL-Cを減らし、HDL-Cを増やす作用があります。
特に有酸素運動は脂質代謝を改善し、糖代謝や血圧の調整にも関与するため、動脈硬化のリスク低減に有効です。

肥満

内臓脂肪の蓄積はLDL-C上昇とHDL-C低下を引き起こします。

喫煙

喫煙はHDL-Cを低下させ、血管内皮機能を損ない、脂質異常を助長します。
さらに、喫煙による酸化ストレスは動脈硬化を進行させる要因となります。
その結果、喫煙者は非喫煙者に比べ、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが大幅に上昇することが報告されています。

脂質異常症の合併症|アテローム性動脈硬化症のリスク

脂質異常症(高LDLコレステロール血症)ではLDLコレステロールが血管壁に沈着し、アテローム性動脈硬化症の進行を促して血管の狭窄や血栓を生じやすくします。
その結果、脳・心臓・腎臓・下肢の血流障害を招いて、生命に関わる重篤な疾患を引き起こします。

動脈硬化の影響を受ける主要臓器と動脈(脳、心臓、大動脈、腎臓、下肢動脈)を示した人体図

命に関わる合併症

  • 脳梗塞・脳出血
  • 脳動脈瘤・くも膜下出血

心臓

  • 心筋梗塞・狭心症
  • 心不全

大動脈

  • 大動脈瘤・大動脈瘤破裂
  • 大動脈解離

生活の質を下げる合併症

腎臓

  • 慢性腎臓病(CKD)・腎硬化症

下肢動脈

  • 下肢閉塞性動脈硬化症

脂質異常症のリスク評価|リスクの高低を把握しましょう

脂質異常症の治療は、合併症のリスクを減らすことが目的です。
LDLコレステロールが高いと、アテローム性動脈硬化症が進行し、脳梗塞・心筋梗塞・末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患の発症リスクが上昇します。
脂質を適切に管理することで、これらのリスクを大幅に下げられます。このため、早期からの治療が重要です。

上記リンクからご自身のリスク評価ができますので、健診などで脂質異常症の可能性を指摘された方はチェックしてみましょう。

脂質異常症の治療目標|生活習慣改善と脂質管理の薬

脂質異常症を治療する理由|合併症リスクを減らすため

脂質異常症の治療は、合併症のリスクを減らすことが目的です。
LDLコレステロールが高いと、アテローム性動脈硬化症が進行し、脳梗塞・心筋梗塞・末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患の発症リスクが上昇します。
脂質を適切に管理することで、これらのリスクを大幅に下げられます。このため、早期からの治療が重要です。

脂質管理の目標値(LDL-C基準)

前項の「脂質異常症のリスク評価」で算出された管理区分により目標とするLDL−C値が決まります。

脂質管理目標値

脂質異常症のための生活習慣改善|脂質異常症の予防と治療の基本

食事療法(脂質バランスの見直し)

DASH食・地中海式食を参考に、野菜・魚中心の食事を心がけるのがポイントです。

  • 「まごわやさしい」(豆・ごま・わかめ・野菜・魚・椎茸・芋)を意識する
  • 動物性脂肪を控え、植物性脂肪や魚の油を活用する(オリーブオイル・えごま油など)
  • 塩分は1日6g未満を目標にし、薄味を心がける(高血圧合併例では特に重要)
【飽和脂肪酸が多い食品】
【トランス脂肪酸を含む加工食品】
トランス脂肪酸を含む加工食品
【コレステロールを多く含む食品】
トランス脂肪酸を含む加工食品

 積極的に摂るべき食品

【不飽和脂肪酸が豊富な食品】
不飽和脂肪酸が豊富な食品
【食物繊維を多く含む食品】
トランス脂肪酸を含む加工食品
【大豆製品】
トランス脂肪酸を含む加工食品

食事療法(脂質バランスの見直し)

【有酸素運動】
ランニングしている女性
  • ウォーキング(1日30分×5回/週)
  • ジョギング・サイクリング・水泳(1回20分×3回/週)
  • 階段の利用を増やす(1日10分程度)
【筋力トレーニング】
スクワットしている女性
  • スクワット・ランジ(下半身の大筋群を鍛える)
  • 腕立て伏せ・ダンベル運動(筋肉量を増やし基礎代謝を向上)

脂質異常症の治療|薬物療法

薬剤の使い分けはシンプルで、LDL-Cが高ければまずはスタチン類を開始し、必要に応じて小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、PCSK9阻害薬を追加します。

通常スタチン類で管理目標値を達成することが多く、一部で小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の追加を要し、さらに限られたケースでPCSK9阻害薬を必要とします。

TG 150mg/dL以上では生活習慣改善を優先し、必要に応じて薬物療法を考慮します。
TG 500mg/dL以上では膵炎の発症リスクが高くなるため、薬物療法の適用優先度が高まります。

動脈硬化の影響を受ける主要臓器と動脈(脳、心臓、大動脈、腎臓、下肢動脈)を示した人体図

よくあるご質問(FAQ)

治療全般

脂質異常症とはどんな病気ですか?

血液中の脂質(LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪)のバランスが崩れる病気です。放置すると動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。

脂質異常症はどのくらいの頻度で検査すべきですか?

基本的には年1回の健康診断で確認 するのが理想です。治療中の方やリスクが高い方は、医師の指示に従い 3~6ヶ月ごと に採血検査を行うことがあります。

自覚症状がないのに治療が必要なのはなぜですか?

脂質異常症は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、症状がないまま進行します。
気づかないうちに血管が詰まり、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあるため、早期の管理が重要です。

生活習慣と予防

食事でコレステロールを下げることはできますか?

可能ですが、食事だけで大きく下げるのは難しい場合があります。
青魚(EPA・DHA)、ナッツ類(オメガ3脂肪酸)、大豆製品(大豆たんぱく質)、食物繊維を豊富に含む食品が推奨されます。
一方で、飽和脂肪酸(揚げ物・バター・ラード)や過剰なトランス脂肪酸(古い油を使用した揚げ物・一部の加工食品)を避けることが推奨されます。

脂質異常症の人が摂るべき食品・避けるべき食品は?

摂るべき食品:青魚(EPA・DHA)、ナッツ類(オメガ3脂肪酸)、オリーブオイル、大豆製品(大豆たんぱく質)、食物繊維が豊富な野菜・海藻・穀類
避けるべき食品:飽和脂肪酸を多く含む食品(揚げ物・バター・ラード・内臓肉)、加工食品(揚げ菓子・スナック菓子)

脂質異常症に効果的な運動はありますか?

有酸素運動(ウォーキング・水泳・サイクリング)が特に有効で、1回30分以上を週3〜5回が推奨されます。
筋トレも併用することでHDLコレステロールの増加が期待できます。

治療と薬

スタチン(コレステロール低下薬)は一生飲み続けなければなりませんか?

個人のリスクによります。
生活習慣の改善により薬を減量・中止できることもありますが、心血管疾患のリスクが高い場合は継続が推奨されます。自己判断で中止せず、医師と相談しましょう。

スタチンの副作用にはどんなものがありますか?

まれに筋肉痛・倦怠感・肝機能障害がみられることがあります。
ごく稀に横紋筋融解症という重篤な副作用があるため、強い筋肉痛が続く場合はすぐに受診してください。

脂質異常症の治療薬にはどんな種類がありますか?

主に以下の薬があります(薬の選択は、患者のリスクや血液検査の結果によって決まります)。

スタチン:LDLコレステロールを低下させる第一選択薬
エゼチミブ:コレステロールの吸収を抑える薬(補助療法)
PCSK9阻害薬:高リスク例で使用する注射薬
フィブラート:中性脂肪(TG)が高い場合に使用

薬を飲まずに生活習慣だけで改善できますか?

軽度の脂質異常症であれば可能ですが、数値が高い場合や動脈硬化のリスクが高い場合は、薬物療法が必要になります。

特殊なケース

脂質異常症は遺伝することがありますか?

はい、「家族性高コレステロール血症(FH)」など、遺伝的要因による脂質異常症もあります。
FHの方は若年でも動脈硬化のリスクが高いため、早期診断・治療が重要です。

妊娠中や授乳中でも治療は必要ですか?

妊娠中は基本的に薬物療法は推奨されませんが、生活習慣の管理が重要です。
授乳中も同様に、スタチンなどの薬は控え、医師と相談の上で治療を検討します。

子供や若年者でも脂質異常症になることはありますか?

主に以下の薬があります(薬の選択は、患者のリスクや血液検査の結果によって決まります)。

はい、特に遺伝性の脂質異常症(FH)では、子供や若年者でも発症することがあります。
肥満や運動不足による脂質異常症も増えており、若年発症でも放置せず管理が必要です。

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