肺炎球菌ワクチンのご案内|芦屋市の内科・小児診療・皮膚診療
肺炎球菌は、肺炎・中耳炎・髄膜炎などを引き起こす日常的に見かける細菌ですが、その一方で、小さなお子さんや高齢者では重症化することがある警戒すべきものでもあります。
ワクチンが有効ですが、近年、肺炎球菌ワクチンが次々と登場し、自治体が実施する定期接種で採用されるワクチンも流動的です。
本項では
について、わかりやすく解説します。
最初にまとめ
肺炎球菌とは
肺炎球菌はその名の通り肺炎の原因となる細菌ですが、健常な人でも鼻や喉といった上気道に常在しており、平たく言えば「そこらじゅうにいるバイ菌」ということになります。
市中肺炎のうちの20.0%、医療・介護関連肺炎のうちの12.4%を占めることが報告されており、細菌性肺炎の主要な原因として知られています。
また、肺炎以外にも、プライマリ・ケア領域で日常的に見かける中耳炎や副鼻腔炎といった感染症の主要な原因であることも知られています。
以下に、肺炎球菌による主要な感染症を示します。
主要な肺炎球菌感染症
前者は軽症が多いのに対して、後者は時に非常に重篤な経過となり、「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」と呼ばれます。
IPDは死亡率が高かったり、特に髄膜炎では神経学的後遺症(難聴・認知機能異常など)が問題となります。
特に小児と高齢者はリスクが高いため、ワクチンによる予防の重要性が高くなります。
肺炎球菌を特徴づける「莢膜」
一般的な細菌は、細胞壁が一番外側にあり、免疫はその表面にある「抗原」を目印に認識します。
一方、肺炎球菌は細胞壁のさらに外側を「莢膜」という構造が覆っており、免疫は主に莢膜にある抗原を認識します。
この抗原には「血清型」と呼ばれる、90種類以上のバリエーションがあります。
血清型が異なると、免疫学的には別物となるため、肺炎球菌に対する免疫構築を難しくするポイントの一つとなっています。
ワクチンによる免疫構築も同様に難しく、肺炎球菌ワクチンの歴史は、いかに多くの血清型をカバーするかの歴史でもあります。
また、ワクチンがある血清型をカバーすると、その血清型による肺炎球菌感染症は抑制されるものの、それ以外の血清型が増加する「血清型置換」という現象が起こるため、ワクチン開発はイタチごっこの様相を呈しています。
肺炎球菌ワクチンの種類と特徴
2026年現在、国内で使用される肺炎球菌ワクチンは4種類あり、メカニズムから大きく以下の2つに分けられます。
・結合型ワクチン(PCV)
・多糖体ワクチン(PPSV)
また、各ワクチンがカバーする血清型の数を価数といい、例えば15種類をカバーする結合型ワクチンは「PCV15」というように表されます。
以下に各ワクチンの血清型のカバー状況を示します。

国内で初めて承認されたPCV7は上図の青で示された7種類の血清型に対応し、その後、緑で示されたプラス6種類をカバーするPCV13が登場しました。
これらによって、上図で「古典型」とされる血清型はかなり抑制されるようになりましたが、一方で、血清型置換が進んで、PCV13がカバーできない血清型が増えていきました。
そういった血清型をカバーすべく、オレンジで示されたプラス2種類をカバーするPCV15、さらに赤で示されたプラス5種類をカバーするPCV20へと対応幅を拡大して、現在に至っています。
これらのワクチンにより、ワクチン導入前に比して古典型は十分抑制されたと言える状況になっています。
一方で、血清型置換によって非古典型による侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の増加が看過し得なくなりつつあり、最新のPCV21は、古典型よりも近年増加型にウェイトをシフトした設計となっています。
結合型ワクチン(PCV)
現在の肺炎球菌ワクチン戦略では、免疫原性(免疫応答を惹起させる性質)が高く、多くの血清型をカバーする結合型ワクチン(PCV)が中心となります。
PCVの特徴
主なワクチン
多糖体ワクチン(PPSV)
多糖体ワクチン(PPSV)は、かつては多くの血清型をカバーできるのが特徴でしたが、免疫原性がPCVより劣るのと、近年のPCVが多くの血清型をカバーするようになったため、使い所が限られてきました。
PPSVの主な役割
主なワクチン
ワクチンの使い分け
2026年4月1日に、日本感染症学会から「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」がリリースされ、以下のような考え方が示されました。
基本方針
例外
PCVが、免疫原性が高く、多くの血清型をカバーするようになった現状では合理的な方針です。
PPSVは使い所が限られつつありますが、PCV15後に接種することで、両者に共通する血清型についてブースター効果が得られるため、この点を利用した使い方が示されています。
また、PCVより免疫原性に劣るとは言え、PCV20までがカバーし得ない血清型をカバーしており、この点を重視した接種は想定されます。
定期接種と任意接種
一般的に自治体主導のもと、計画的に実施するワクチン接種を定期接種といいます。
対して、個人の意志のもと、任意に実施するワクチン接種を任意接種といいます。
定期接種
年代的に肺炎球菌感染症のリスクが高い、小児と高齢者を対象として実施されています。
小児については以下のページをご参照下さい。
高齢者肺炎球菌ワクチン接種の概要は以下の通りです。
高齢者肺炎球菌定期予防接種
※1 65歳の誕生日前日から66歳の誕生日の前日まで
※2 心臓、腎臓又は呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障がいを有する方。
及びヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障がい(身体障害者手帳1級相当)を有する方。
任意接種
個人の意志のもと、任意に受けるワクチン接種を任意接種といいます。
接種の必要性が高い方には定期接種の機会がありますが、任意接種であっても接種を検討すべき方もおられます。
任意接種を検討すべき方
これらの状態では、肺炎球菌による肺炎や重症感染症(菌血症など)のリスクが高くなることが知られているため、該当される場合は接種をご検討下さい。
よくあるご質問(FAQ)
高齢の方や持病のある方では、肺炎や菌血症の予防効果が期待できるため、接種が推奨されています。ご自身が対象になるかは、お気軽にご相談ください。
接種当日に65歳の方が対象です。また、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の重い病気や免疫機能の低下がある方も対象となる場合があります。
接種歴やワクチンの種類によって対応が異なります。追加接種が可能な場合もありますので、過去の接種歴が分かるものをお持ちの上でご相談ください。
PCV(結合型ワクチン)は免疫をしっかり作ることに優れており、現在の主流です。一方、PPSV(多糖体ワクチン)はより多くの血清型をカバーできますが、現在は補助的に使われることが多くなっています。
現在はPCV(特にPCV20)を中心に接種することが多くなっていますが、接種歴や持病によって最適な選択は異なります。当院では個別にご案内しています。
接種部位の痛みや腫れ、発熱などがみられることがありますが、多くは数日以内に軽快します。重い副反応はまれです。
同時接種は可能です。接種スケジュールについてはご相談ください。
ワクチンの在庫やスケジュールの関係がありますので、事前にご予約をお願いしています。
ワクチンの種類や接種歴によって異なります。現在はPCVを中心とした接種が主流で、追加接種が必要かどうかは個別に判断されます。


