高血圧|芦屋市の内科・生活習慣病外来
高血圧は「サイレントキラー(静かな病気)」と呼ばれ、自覚症状がないままに心臓や血管に負担をかけ続けて、重大な合併症のリスクを高める疾患です。
脳卒中や心筋梗塞といった日常生活を一転させるような病気の原因となるため、早期発見と適切な管理が重要です。
本ページでは、最新の高血圧診療ガイドライン(2025年改訂)に基づき、診断・治療・日常生活のポイントをわかりやすく解説します。
最初にまとめ
高血圧とは
高血圧とは血管にかかる圧力(血圧)が慢性的に高い状態であり、長期的な圧ストレスが血管壁にダメージを与えて、動脈硬化を進行させます。
問題の本質は症状の有無ではなく、動脈にダメージ(動脈硬化の進行)を与え続ける状況を抱えてしまうということにあります。
その結果として、
などのリスクが高まります。
高血圧の診断基準
高血圧の診断は、複数回の測定結果をもとに行います。
健康診断や、診察室での1〜2回の計測で断定するのは早計のため、当クリニックではある程度の期間、繰り返し計測した結果に基づいて診断しています。
診察室血圧
家庭血圧
収縮期血圧・拡張期血圧のいずれかが上記を満たすと高血圧と診断されます。
また、診察室と家庭などのリラックスした環境では差が出ることが多いため、昨今は診察室血圧よりも家庭血圧が重視されています。
血圧分類(2025年ガイドラインの考え方)
血圧は、測定値に応じていくつかの区分に分類され、区分ごとにリスクが異なります。

ご自分の血圧分類を確認し、リスクを確認してみましょう。
高血圧の原因
高血圧の多く(90%)は原因が特定できない本態性高血圧です。
一方で他の疾患に伴う二次性高血圧が10%ほどあり、二次性高血圧を見逃さないのは内科診療として非常に重要です。
これまで二次性高血圧の可能性を検討されたことなかったり、降圧剤を服用しても血圧が下がりにくい方などは、一度ご相談下さい。
本態性高血圧
二次性高血圧
高血圧の合併症
高血圧が続くと、動脈硬化の進行を促し、脳・心臓・腎臓など全身の臓器にダメージを与えていきます。
その結果、脳卒中・虚血性心疾患・大動脈疾患など、重篤な合併症の発症リスクや死亡リスクが高まります。
警戒すべき点は、これらの重篤な疾患が、自覚症状を伴わないまま静かに進行し、ある日突然発症することが少なくないことです。
高血圧が「サイレントキラー(静かな病気)」と呼ばれる理由もここにあります。
高血圧治療の目的は、単に血圧の数字を下げることではなく、こうした将来の合併症リスクを減らすことにこそあります。
健康診断で高血圧の可能性を指摘されても、「症状がないから大丈夫」と感じる方は少なくありません。しかし問題は、症状の有無ではなく、無症状のうちに重大なリスクが少しずつ高まっていくことにあります。

命に関わる合併症
脳
心臓
大動脈
生活の質を下げる合併症
眼
腎臓
下肢動脈
高血圧の治療(薬物療法)
生活習慣の改善(基本)
薬物療法
高血圧の治療では、「生活習慣の改善」が基本となります。塩分摂取を控えることに加え、体重管理・適度な運動・節酒・禁煙などを継続することで血圧の改善が期待されます。
生活習慣の改善だけでは十分な降圧が得られない場合や、合併症リスクが高い場合には、降圧剤による薬物療法を併用します。
降圧剤の種類は10種類あまりありますが、特にカルシウム拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・利尿薬の4種類が使用頻度が高いものとして挙げられます。
| 分類 | 特徴 | 適応・使われやすい場面 | 代表的薬剤(一般名/製品名) |
|---|---|---|---|
| カルシウム拮抗薬 | 血管の筋肉をゆるめて広げ、血圧を下げます。 1日1回で効く薬が多く、効果が安定しています。 | 高齢者、脳卒中既往、狭心症、慢性腎臓病(蛋白尿なし) | 💊アムロジピン(ノルバスク®、アムロジン®) 💊シルニジピン(アテレック®) 💊アゼルニジピン(カルブロック®) |
| ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) | 血圧を上げるホルモンの働きをブロックします。 腎臓や心臓などの臓器を守る作用をあわせ持つ、安全性が高く長期治療に適した降圧薬です。 | 慢性腎臓病(蛋白尿あり)、糖尿病、心不全、心肥大 | 💊テルミサルタン(ミカルディス®) 💊オルメサルタン(オルメテック®) 💊アジルサルタン(アジルバ®) 💊ロサルタン(ニューロタン®) |
| ACE阻害薬 | 血圧を上げる物質の産生を抑えます。 心臓や腎臓を守る効果があります。 空咳(約5〜20%)が出ることがあります。 | 慢性腎臓病(蛋白尿あり)、糖尿病、心不全、心筋梗塞後 | 💊イミダプリル(タナトリル®) 💊エナラプリル(レニベース®) 💊ペリンドプリル(コバシル®) |
| 利尿薬 | 体の余分な塩分と水分を尿として出し、血圧を下げます。 少量で効果が出ます。 | 高齢者、心不全、難治性高血圧 | 💊トリクロルメチアジド(フルイトラン®) 💊インダパミド(ナトリックス®) 💊アゾセミド(ダイアート®) |
その他の降圧剤は、特定の病状や、補助的に使われます。
| 分類 | 特徴 | 適応・使われやすい場面 | 代表的薬剤(一般名/製品名) |
|---|---|---|---|
| β遮断薬 | 心拍数をゆっくりにして、心臓の負担を減らします。 | 心不全(HFrEF)、虚血性心疾患、頻脈性不整脈、大動脈解離 | 💊ビソプロロール(メインテート®) 💊カルベジロール(アーチスト®) 💊プロプラノロール(インデラル®) |
| ARNI | 心臓を保護する作用と血圧を下げる作用をあわせ持つ薬です。 | 心不全(HFrEF)合併高血圧 | 💊サクビトリル/バルサルタン(エンレスト®) |
| ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 | 塩分をため込むホルモンの働きを抑えます。 ほかの薬で十分下がらない場合に追加されます。 | 原発性アルドステロン症、心不全、難治性高血圧 | 💊スピロノラクトン(アルダクトンA®) 💊エプレレノン(セララ®) 💊エサキセレノン(ミネブロ®) |
| α遮断薬 | 血管を広げて血圧を下げます。 立ちくらみが出ることがあります。 | 前立腺肥大合併高血圧 | 💊ドキサゾシン(カルデナリン®) |
| αβ遮断薬 | 心臓と血管の両方に作用し、血圧を下げます。 | 心不全、褐色細胞腫、妊娠高血圧 | 💊カルベジロール(アーチスト®) 💊ラベタロール(トランデート®) |
各降圧剤とも、メリット/デメリット/使うべき状況があるため、選択に際しては幅広い内科的な視点が必要です。
高血圧の治療(非薬物療法)
食事療法
「高血圧と言えば減塩」というのはよく知られたことですが、実際、高血圧における食事療法は重要な意義を持っています。
高血圧患者が、塩分の一日摂取量を6g/日にとどめると、
します。
5mmHgの収縮期血圧の低下は、
というメリットをもたらします。
また、摂食量の適正化による体重管理や、野菜・果物の摂取、節酒なども血圧改善に役立ちます。
食事量を適切にして、様々な食材を摂るよう心がけましょう。
無理に厳しい制限を行うのではなく、日常生活の中で継続しやすい方法を取り入れることが大切です。
減塩のポイント
食生活全体の改善
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)とは、高血圧を止めるための食事的アプローチとして、1990年代にアメリカ国立衛生研究所(NIH)によって考案された食事療法です。
血圧を下げるミネラルを適切に組み合わせることを旨としています。
食事療法は味気のない、意欲的になれない話にならざるを得ませんが、DASH食は下のイメージのようになります。
いつもの食卓にも、少しずつ工夫を取り入れてみて下さい。

DASH食の特徴
DASH食で期待されること
運動療法
運動療法を継続的に行うことで、血圧低下・体重減少・動脈硬化予防・糖代謝改善といった効果が見込めます。
有酸素運動がまず基本となり、余力があれば適度な筋力トレーニングを加えて、基礎代謝の改善や体重管理を図りましょう。
有酸素運動
筋力トレーニング
降圧目標
高血圧治療の真の目的は、脳卒中や心疾患といった、動脈硬化性疾患の発症とそれらによる死亡を抑制することです。
その目的を成し遂げるには、ただ降圧剤を服用すればいいのではなく、降圧目標を達成することが肝要です。
2025年の高血圧管理・治療ガイドラインでは、基本的な降圧目標以下のように示しています。
一般成人
個別に調整が必要な場合
以前は年齢や合併症ごとに細かく降圧目標が分かれていましたが、エビデンスの蓄積により、シンプルになってきました。
ただし、必要に応じて個別に調整することも重要です。
血圧の測り方
生活習慣病で受診すると、血圧測定がなされると思います。
血圧は容易に変動するため、近年は平常な状態を得やすい家庭血圧が重視されています。
血圧測定法には細かい作法もありますが、当クリニックでは、ポイントを以下ようにお伝えしています。
測定した血圧は、血圧手帳やアプリなどに記録し、受診時にご持参ください。
よくあるご質問(FAQ)
完全に治るというより、コントロールする病気です。
生活習慣改善により減量・中止できる場合もあります。
ほとんどありません。
どちらも重要ですが、特に中高年では「上の血圧(収縮期血圧)」が心血管リスクと強く関係するとされています。
一方で、加齢による動脈硬化性変化がまだ少ない若年者では、中高年ほど収縮期血圧は上昇しにくく、拡張期血圧の上昇が先行することがあります。
そのため、「下の血圧(拡張期血圧)」の上昇が重要な意味を持つこともあります。
そのため、どちらか一方だけを見るのではなく、年齢や合併症も含めて総合的に評価することが大切です。


