兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

百日咳
兵庫県は47都道府県中で第8位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。
- 2025年2月以降に急増し、3月下旬〜4月初旬から急激な上昇傾向を示しました。
- 5月には一時的な低下も見られましたが、6月後半に再び増加傾向に転じ、最新週では60件台後半まで上昇しています。
- この1年で最も高い水準に達しており、流行は継続中と考えられます。
百日咳は初期に風邪様の症状を呈し、徐々に特徴的な発作性の咳が出現します。
乳児では無呼吸発作を呈することもあり、早期の診断と治療が重症化の予防につながります。兄姉などからの家庭内感染にも注意が必要です。
最近の兵庫県データでは7〜8割が家庭内感染、残りが学校内での感染と推定されています。
上記に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は3大夏風邪の1つです。
- 4月以降より明らかな増加傾向がみられ、6月に入り急激な上昇を示しています。
- 最新週では報告数が70件台に達し、この1年間で最多の水準となりました。
- この傾向は例年夏場にかけての流行パターンと一致しており、7月以降もしばらく増加が続く可能性があります。
咽頭結膜熱は名前の通り、
を呈する、主に学童期までに好発する感染症です。
飛沫感染・接触感染により感染し、プール熱の俗称が示すようにプールにおいてはタオルや、プールの水が感染源となり得ると考えられています。
ただし、昨今はタオルを共有する機会が減ったり、プールの塩素濃度の適正化などによりプールを地盤とした流行はないようです。
インフルエンザのような迅速抗原検査キットがありますが、精度が十分とは言えず、陰性であっても咽頭結膜熱を否定し得ません(陽性の場合は高い精度で咽頭結膜熱と診断し得ます)。
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎はこの1年間、かつてなかった高水準を維持し続けています。
- 2025年6月にかけて報告数が増加し、直近では今シーズン最多レベルに達しています。
- 年間を通じて波がありますが、5月後半以降は明確な上昇傾向が見られます。
- 例年夏場は一時的に落ち着く傾向があるものの、今年は高止まりの可能性があります。
迅速検査だけで診断しにくいのが溶連菌性咽頭炎の難しさですが、
といった条件が揃った時は受診されるのがいいでしょう。
伝染性紅斑(りんご病)
りんご病の名前で知られる伝染性紅斑は増加傾向が続いています。
- 2025年春以降、報告数が急激に増加し、6月末には今シーズン最多を更新しました。
- 年初には中等度の増加にとどまっていましたが、5月以降はほぼ一貫した上昇が続いています。
- 現時点では減少の兆しは見られず、流行は継続する可能性があります。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。
COVID-19
- 2024年夏に大きな流行のピークがありましたが、その後は急速に減少しました。
- 2025年2〜3月には一時的な増加傾向が見られましたが、大きな波には至りませんでした。
- 直近の6月時点では、報告数はやや増加傾向が続いています。
急性上気道炎にとどまるものから、インフルエンザのような症状が強いケース、高齢者に多い入院を要するケース、一部で死亡するケースなど幅広い症状を認めるCOVID-19。
いわゆるLong-COVIDや、心血管関連疾患の発症リスクの増加など、中・長期的な問題も指摘されており、かからないのが望ましい感染症です。
手足口病
夏風邪の一角を占める手足口病。
- 2024年7〜8月に非常に大きな流行が発生し、報告数は800件近くに達しました。
- その後は急速に減少し、11月以降は明確な終息傾向が見られました。
- 2025年春から初夏にかけてもほぼ発生は見られず、現在は散発的な報告が続くにとどまっています。
主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、手・足・口腔内に小水疱を伴う発疹が出現します。乳幼児での発熱・食欲低下が主症状で、重症化は稀ですが、保育園・幼稚園での広がりに注意が必要です。