芦屋市・西宮市・神戸市の感染症情報(7/24)

兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市西宮市神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

2025年6月5日から7月24日までの主要感染症(COVID-19、咽頭結膜熱、A群溶連菌咽頭炎、手足口病、伝染性紅斑、ヘルパンギーナ、百日咳)の週別報告数推移を示す折れ線グラフ。COVID-19とヘルパンギーナが7月中旬にかけて急増し、百日咳も高水準で推移している。

目次

COVID-19

2023年8月から2025年7月までのCOVID-19報告数の推移を示す折れ線グラフ。2023年8月に急増して以降は急減し、2024年2月頃に再上昇のピークが見られた。以降は減少傾向が続いていたが、2025年6月以降に再び報告数が増加している。

動向

  • 過去5週連続で増加が続いており、最新週(7/24週)は今シーズン最多の105件となりました。
  • 6月中旬の49件から倍以上に増加しており、地域内での感染拡大が続いています。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱・咽頭痛・倦怠感・咳といった典型的な風邪症状のほか、味覚・嗅覚異常や長引く咳がみられることもあります。
  • 学校や職場などでの集団感染に注意が必要な時期です。体調不良時は無理をせず休養し、マスクや手洗いなどの基本的な感染対策も再確認しましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 多くは軽症ですが、高齢者や基礎疾患のある方では肺炎などの重症化リスクがあります。
  • 解熱剤で発熱がコントロールできない、呼吸がつらい、強い倦怠感があるといった場合は、医療機関での早めの受診をご検討ください。

百日咳

2023年8月から2025年7月までの百日咳の報告数推移を示す折れ線グラフ。2024年初頭にはほぼ報告がなかったが、春以降に急増し、5月以降は60〜80件の高水準を維持。増減を繰り返しながらも流行が継続している。

百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。

兵庫県は47都道府県中で第8位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。

動向

  • 年初から報告が続いており、5月末から6月にかけては40〜70件台を上下する状態が継続。
  • 7月3日週にいったん減少したものの、その後再び増加に転じ、最新週(7/24週)は72件と高水準を維持しています。
  • 地域内での流行が長期化しており、小児~成人まで幅広い年齢層での感染が想定されます。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 特徴的な「コンコンコン…ヒュー」といった連続する咳が数週間続くことがあります。
  • 小児の重症例では咳込みによる嘔吐、乳児では無呼吸発作などが起こることがあり、注意が必要です。
  • 咳が長引く場合や、周囲に同様の症状の方がいる場合は、早めに受診しましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 初期は普通の風邪と区別がつきにくく、診断が遅れることもあります。
  • 咳が2週間以上持続する場合や、夜間に悪化する咳・咳込み後の嘔吐が見られる場合は、百日咳を疑って検査や治療が検討されます。

特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。

  • 連続する短い咳に続けて、息を吸うときに「ヒュー」と音がする
  • 周囲に百日咳と診断された人やしつこい咳の人がいる
  • しつこい咳が続く乳幼児の同居者

手足口病

2023年8月から2025年7月までの手足口病の報告数推移を示す折れ線グラフ。2023年夏に大流行(800件超)した後は急減し、冬季は低水準で経過。2025年6月以降に緩やかに増加し、直近でやや高めの水準にある。

手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。

動向

  • 5月末までは報告数はごく少数(2件)でしたが、6月初旬に一度14件へ増加し、その後は10件前後で横ばいの期間が続きました。
  • 7月10日週の42件をピークにやや減少傾向が見られますが、直近週も32件依然として高水準での推移が続いています。
  • 幼稚園や保育園単位での集団感染が見られる時期です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 口内の水疱(痛みのある発疹)や、手足などの末端に赤いぶつぶつが出ることが多いですが、発熱は目立たないケースもあります。
  • 幼児が食欲不振になる原因として、口内の痛みによる哺乳や食事の拒否が目立ちます。
  • 同じ保育施設で流行している場合は、初期症状に注意を払いましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 多くは自然軽快しますが、水分摂取が困難な場合や高熱が続く場合は受診をおすすめします。
  • まれに髄膜炎や心筋炎などの合併症を起こすことがあるため、長引く倦怠感・嘔吐・頭痛があれば医師に相談してください。

ヘルパンギーナ

2023年8月から2025年7月までのヘルパンギーナの報告数推移を示す折れ線グラフ。2023年夏にやや流行したのち低水準で経過し、2025年6月から急増。7月に入って報告数が急激に上昇し、7月中旬にピーク(100件超)を記録している。

ヘルパンギーナは、比較的強い口内炎・咽頭痛を呈する、手足口病の類縁疾患とも言える夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。

動向

  • 5月末時点では2件とごく少数でしたが、6月以降毎週増加が続いています。
  • 7月10日週に78件、7月17日週に101件と急増し、直近週は93件とやや減少したものの、依然として高水準を維持しています。
  • 例年どおり夏季の本格的な流行に入っており、保育園・幼稚園などで局所的にまとまった報告が見られます。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 突然の高熱とともに、のど(口蓋垂付近)に強い痛みを伴う小さな水疱・潰瘍が出現します。
  • 食欲不振や不機嫌、水分摂取の減少がみられたら、脱水に注意が必要です。
  • きょうだいや園内での感染拡大が起きやすいため、同様の症状があれば早めに対応を検討してください。

臨床的特徴と受診の目安

  • 解熱剤や経口補液での対処が中心となり、多くは数日で改善します。
  • 高熱が続く、水分がまったくとれない、ぐったりしているなどの症状があれば、早めの受診をご検討ください。

咽頭結膜熱(プール熱)

2023年8月から2025年7月までの咽頭結膜熱の報告数推移を示す折れ線グラフ。2024年後半までは低水準だったが、2025年5月以降に急増し、7月初旬にピーク(約75件)を記録。直近ではやや減少しているが依然として高水準。

咽頭結膜熱は、咽頭痛・結膜炎の併発を特徴とするプール熱の名で知られる夏風邪の一つです。

動向

  • 5月末から6月にかけては50件前後で横ばいの週が続きましたが、6月下旬(6/26)には72件に増加
  • 7月10日週に72件、7月17日週に74件と高止まりしていましたが、最新週(7/24週)は55件とやや減少しました。
  • それでも他の感染症と比較して高水準を維持しており、引き続き注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 頬がりんごのように赤くなる「紅斑」が典型的ですが、発疹の出現前に発熱や軽い風邪症状のみで経過することがあり、周囲にうつしてから気づくケースもあります。
  • 成人では関節痛、倦怠感が目立つ場合があります。

臨床的特徴と受診の目安

  • 多くは軽症で自然軽快しますが、妊娠中(特に妊娠初期)の感染は胎児に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
  • 妊婦の方が接触した可能性がある場合や、発疹や関節症状が長引く場合は医師に相談を。

伝染性紅斑(りんご病)

2023年8月から2025年7月までの伝染性紅斑の報告数推移を示す折れ線グラフ。2024年秋から徐々に増加を始め、2025年5月以降に急上昇。7月初旬にピーク(約75件)を記録し、直近ではやや減少しているが高水準を維持している。

伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。

動向

  • 5月末の時点で既に40件超の高水準で、6月を通して50件前後を維持
  • 6月下旬(6/26)に69件と急増し、以降は60〜70件台で推移
  • 最新週(7/17)は74件となり、8週連続で高水準を保つ明確な流行状態にあります

ご家庭で気をつけたいこと

  • 典型的な「両頬が赤くなる」症状が出る頃にはすでに感染力はなくなっているため、登園・登校の制限は通常不要です。
  • ただし妊娠中の方が感染すると胎児への影響が出ることがあるため、妊婦さんがいる家庭では特に注意が必要です。
  • 初期には風邪に似た症状や微熱のみのこともあり、家庭内での体調変化に気づきにくい場合もあります。

臨床的特徴と受診の目安

  • 頬の紅斑の前に微熱・倦怠感・鼻水などの症状があり、その後両頬が赤くなる特徴的な発疹が現れます。
  • 背中や腕などにもレース状の淡い発疹が広がることがあり、かゆみを伴うケースもあります。
  • 紅斑が出現していれば特別な治療は不要ですが、症状が強い場合や発疹の変化が長く続く場合は医療機関で相談してください。

妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい

伝染性紅斑とは

別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。

大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。

合併症

胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。

骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。

感染対策

りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。

具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。

溶連菌性咽頭炎

2023年8月から2025年7月までのA群溶連菌咽頭炎の報告数推移を示す折れ線グラフ。年間を通じて波を描くように増減を繰り返しながら、概ね50~80件の高水準を維持。2025年6月以降は一時的に90件前後まで増加し、7月下旬にかけては減少傾向を示している。

溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。

動向

  • 5月末から6月中旬にかけては50〜60件台で推移していましたが、6月下旬にかけて86件へ急増
  • 7月10日週に57件、7月17日週に71件と増加したのち、最新週(7/24週)は40件と大きく減少しました。
  • 一時的な流行のピークを越えた可能性もありますが、例年と比較するとなお高めの水準です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • のどの強い痛み・発熱・いちご舌(舌に赤いぶつぶつ)**がみられることがあります。
  • 通常、ウイルス性の風邪と異なり咳や鼻水は目立たないのが特徴です。
  • 典型的な「猩紅熱様発疹」は近年あまり見られないものの、皮膚の赤みやかゆみを伴うことがあります。

臨床的特徴と受診の目安

  • 急性の発熱と強い咽頭痛で発症し、咽頭の発赤・扁桃の腫脹・白苔を伴うことがあります。
  • 舌にブツブツができる「イチゴ舌」や、体に赤い発疹が出る「猩紅熱様発疹」は古典的ですが、現在ではあまり見られないことが多いです。
  • 早期診断・抗菌薬治療により重症化を防ぎ、登園許可も早期に得られることが一般的です。