兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。
- COVID-19：増加が続き、報告数はさらに上昇
- 百日咳：やや減少傾向でも引き続き高水準
- 手足口病：前週比は減少しましたが、依然高水準
- ヘルパンギーナ：やや減少したものの高水準を維持。夏季に流行する代表的なウイルス性咽頭炎
- 咽頭結膜熱（プール熱）：前週比で大きく減少も、依然として高水準
- 伝染性紅斑（りんご病）：やや減少。胎児への影響が懸念されるため注意が必要
- Ａ群溶連菌咽頭炎：前週比で減少傾向ながら、例年比で高めの水準を継続中
COVID-19
動向
- 直近8週で6週連続の増加となっており、報告数は42件 → 137件へと推移しています。
- 特に7月に入ってからの増加が顕著で、7月中に2倍近くに膨らんでいます。
- 定点当たりの報告数も高く、兵庫県全体で見ても警戒が必要な水準です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 小児や高齢者では発熱のみで軽症のケースもありますが、咳や全身倦怠感が長引くこともあります。
- 学校や職場などでも感染が拡大しやすい時期です。体調不良時の登校・出勤の見合わせ、換気・手指衛生などを意識しましょう。
- 高齢者や基礎疾患のある方と接する場面では、マスクの活用や会話時の距離も配慮を。
臨床的特徴と受診の目安
- 現在主流の変異株では、咽頭痛が前面に出る傾向を認める印象です。
- 小児では短期間の発熱のみで終わることもありますが、全身倦怠感や食欲不振が続く場合は受診を。
- 高齢者や基礎疾患のある方で、息苦しさ・持続する高熱・意識がぼんやりするなどの症状があれば、早めの医療機関受診を検討してください。
百日咳
百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。
兵庫県は47都道府県中で第7位の報告数と､憂慮すべき状況が続いています（「兵庫県の百日せき 感染状況｜NHK 」）｡
なお現在､百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査（LAMP法）は､検査実施5日ほどで結果が判明します｡
動向
- 6月以降、週ごとの増減はあるものの、全体として高水準が持続しています。
- 今週は49件と、前週（72件）から減少しましたが、過去8週中6週で50件以上と、依然として流行が続いています。
- 学齢期の児童を中心に報告が見られ、10代や成人の無症候性感染も懸念されます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 幼児では、夜間の咳き込みや嘔吐を伴うことが多く、特に生後6か月未満の乳児では重症化に注意が必要です。
- 初期症状で線引は難しいのですが､風邪にしては咳が前面に出ている印象であれば、早めの受診を検討しましょう。
- 学校・園などで集団感染が起こりやすく、予防接種歴の確認も大切です。
臨床的特徴と受診の目安
- 初期は風邪に似た症状（鼻水、微熱、咳）で始まり、1〜2週間後から発作的な咳が目立つようになります。
- 咳き込みの末に嘔吐を伴う・息を吸うときに笛のような音がする（吸気性笛声）のが典型です。
- 乳児や基礎疾患のある方は重症化リスクが高く、少しでも様子が気になる場合は早めの医療機関受診を。
特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
手足口病
手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 7月第1週に報告数が急増（42件）し、その後はやや減少して32件前後で高止まりしています。
- 6月中は10件前後と比較的少なかったことから、7月から明確な流行期に突入したと考えられます。
- 例年7〜8月に流行するウイルス性感染症で、保育園・幼稚園での集団感染が多く見られます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 手のひら、足の裏、口の中に水疱性の発疹が出現し、口内炎による痛みで食事が取りづらいこともあります。
- 乳幼児を中心に感染が広がりやすいため、家庭内でもタオルの共用を避け、こまめな手洗いを心がけましょう。
- 熱が下がっていても、口内炎や脱水、食欲低下が続く場合は受診を検討してください。
臨床的特徴と受診の目安
- 主な症状は、発熱、手足や口腔内の水疱性発疹です。発熱は1〜3日で下がることが多いです。
- 稀に無菌性髄膜炎や脳炎といった神経合併症を起こすこともあります。
- ぐったりしている、飲めない、嘔吐が続くなどの症状がある場合は、早めの受診を推奨します。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、比較的強い口内炎・咽頭痛を呈する、手足口病の類縁疾患とも言える夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 6月中旬までは報告数は一桁でしたが、6月下旬から急激に増加。
- 7月第2週（101件）で一度ピークに達したのち、7月第3週にやや減少（93件）。今週は再び増加し108件となりました。
- 夏季に典型的な流行を示す疾患であり、現在は再増加の兆しが見られます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 突然の高熱（39℃以上）で始まり、のどの奥に小さな水疱や潰瘍ができます。
- 強い咽頭痛により水分摂取が困難となることがあり、脱水予防が最も重要です。
- ゼリー・経口補水液・冷ましたスープなどで少しずつ水分を補う工夫をしましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 主な症状は、高熱、咽頭痛、水疱性咽頭病変で、特に3歳未満の乳幼児に多くみられます。
- 症状は通常1週間以内に軽快しますが、ぐったりしている、水分を全く取れないなどの際は受診を。
- 稀に無菌性髄膜炎や痙攣などの合併症が起こることもあるため、慎重な経過観察が必要です。
咽頭結膜熱（プール熱）
咽頭結膜熱は、咽頭痛・結膜炎の併発を特徴とするプール熱の名で知られる夏風邪の一つです。
動向
- 6月後半から7月前半にかけては報告数が50〜70件台と高水準を維持していました。
- 直近2週（7/24・7/31）はやや減少し、今週は32件。ただし、平年よりも多い水準が続いています。
- プールの使用時期と重なることから、夏季の集団感染に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 高熱、咽頭痛、充血・結膜炎などが特徴で、学校や園での感染拡大が起こりやすい感染症です。
- 症状が治まってもウイルスの排出が数日間続くことがあるため、登校再開のタイミングには医師の指示が必要です。
- プール後は目をこすらない、顔を拭いたタオルを共有しないなど、日常の小さな対策が予防に繋がります。
臨床的特徴と受診の目安
- 原因はアデノウイルスで、突然の高熱・咽頭痛・結膜充血を3〜5日程度伴います。
- 発症初期は風邪に似ており、結膜の充血や目やにが特徴的な所見です。
- 目の痛みが強い、水分が取れない、ぐったりしている場合は受診を検討してください。
伝染性紅斑（りんご病）
伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。
動向
- 6月以降は毎週50件以上を維持しており、高水準が持続しています。
- 今週は53件で、前週（55件）とほぼ同水準。7月上旬のピーク（74件）からはやや減少しましたが、依然として注視が必要です。
- 幼児から小学生を中心に流行しやすく、成人の一部では関節痛などの症状も見られます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 頬がりんごのように赤くなる発疹が特徴で、その後、手足にも網目状の発疹が広がることがあります。
- 発疹が出るころにはウイルスの感染力は弱まっていますが、妊婦への感染では胎児への影響が知られています。
- 流行期には、妊娠中の家族がいるご家庭では特に注意が必要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 初期は微熱や風邪症状で始まり、数日後に頬や四肢に発疹が現れます。
- 発疹はかゆみを伴うこともありますが、1週間程度で自然に消えることが多く、通常は経過観察で十分です。
- 高熱が続く、ぐったりしている、発疹が広範囲に及ぶ場合には受診を検討してください。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため､妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい､風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です｡
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり､前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした｡
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが､合併症に留意が必要な方々がおられます｡
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると､胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります｡
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい｡
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると､重度の貧血や､赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります｡
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが､この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており､りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります｡
肝要なのは生活圏での流行の把握となり､特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして､ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい｡
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので､マスク着用・手洗い励行をお勧め致します｡
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。
動向
- 6月中旬には86件と非常に高い水準でしたが、その後は緩やかに減少傾向。
- 今週は30件と、先週（40件）からも減少しており、ピークは過ぎた可能性がうかがえます。
- とはいえ、例年よりやや多めの水準であり、今後の動向には引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 強い咽頭痛や発熱で発症し、食欲低下や元気のなさが見られます。
- 夏場はウイルス性の咽頭炎と混在しやすいため、咽頭所見や迅速検査での確認が必要です。
- 家族内感染もしやすいため、発症者のタオル・食器の共用は避けましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 主な症状は、突然の高熱、咽頭痛、扁桃の白苔などです。
- 一部では発疹（猩紅熱様）やイチゴ舌が見られることもありますが、近年では典型的な皮疹は少ない傾向です。
- 迅速検査での診断と抗菌薬による治療が可能であり、家族・集団への広がりを防ぐためにも早めの受診が推奨されます。