兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

- COVID-19:226件と過去最多となり、7週連続の増加に加えて、今週は前週比で1.6倍と増加率もさらに加速しました。
明確な流行期に入っており、今後のさらなる拡大に注意が必要です。 - 百日咳:上下しつつも高水準が続いており、小児を中心に持続的な発生がみられます。
- 手足口病:夏風邪の1つ。再び増加に転じ、今週は43件と高水準です。夏季の流行パターンと一致しています。
- ヘルパンギーナ:夏風邪の1つ。前週より減少したものの、59件と依然として多く、今後の動向に注意が必要です。
- 咽頭結膜熱:夏風邪の1つ。やや減少しましたが、28件と依然多くの報告が続いています。
- A群溶連菌咽頭炎:今週再び増加に転じ、44件と再び高水準になっています。
- 伝染性紅斑:先週を上回る66件となり、高水準での推移が続いています。
COVID-19

クリニック診療では風邪程度の症状が多いものの、インフルエンザと同程度の辛さを訴える方も珍しくなく、一部で肺炎にまで至っています。
最近は「のどの痛み」が目立つ方が多いように思われます。
動向
- 7週連続で増加していたCOVID-19は、今週さらに急増し226件となりました。
- 前週(137件)から1.6倍と増加率も加速しており、今シーズン最多を更新しています。
- 市中感染が広がりやすい時期と重なっており、明確な流行期に入ったと考えられます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱や喉の痛み、咳、倦怠感などの症状があれば無理をせず休養をとり、外出や登園・出勤は控えてください。
- 家庭内での感染拡大を防ぐため、症状がある方はマスクの着用と換気を心がけましょう。
- 高齢者や基礎疾患のある方との接触には特に注意が必要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 現在主流の株では、喉の痛みや咳、長引く倦怠感が目立ちます。高熱を伴うこともありますが、多くは軽症〜中等症で経過します。
- 高齢者や持病のある方、乳幼児では肺炎などの合併症を生じる可能性もあるため、呼吸苦や強いだるさを認めた場合は速やかに受診を検討してください。
- 感染の不安がある方は、発症日から24時間以上経過してから抗原検査を行うと精度が高まります。
百日咳
百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。
兵庫県は47都道府県中で第9位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。
なお現在、百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査(LAMP法)は、検査実施5日ほどで結果が判明します。
動向
- 2025年春以降、報告数の増加が続いており、今週も58件と高水準が継続しています。
- 週ごとの変動はあるものの、5月以降の3か月間でほぼ一貫して50件以上を維持しており、流行は持続的といえます。
- 0歳児〜学童世代まで幅広い年代での散発が報告されており、家庭・園・学校内での伝播に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 咳が長引く場合(2週間以上)や、夜間に激しい咳発作を伴う場合には、早めの受診が推奨されます。
- 特に赤ちゃんへの感染は重症化のリスクが高く、咳のある大人が無症状〜軽症でうつす可能性もあります。
- 兄弟間・親子間での持ち込みと広がりにご注意ください。
臨床的特徴と受診の目安
- 初期は風邪に似た症状で始まり、数日後から特徴的な連続的な咳(咳発作)が出現します。
- 乳児では無呼吸・チアノーゼなどの危険な経過をたどることがあるため、特に0歳児がいる家庭では注意深い観察と早期受診が重要です。
- ワクチン未接種や接種から年数が経過している学童・成人も、再感染の可能性があります。
特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
手足口病
手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 手足口病は7月中旬以降やや減少傾向がみられていましたが、今週は43件と再び増加に転じています。
- 夏季に流行しやすい感染症のひとつであり、例年の流行時期と一致した推移を示しています。
- 保育園や幼稚園を中心に、小児の集団生活の場で広がりやすい点に引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 口の中の痛みによる飲水・食事量の低下に注意してください。脱水の兆候(尿量減少・ぐったり・泣いても涙が出ないなど)が見られた場合は、早めに受診を。
- 感染力は発疹が消えた後も続くことがあり、特に便中からのウイルス排出は長期間続くため、おむつ交換後の手洗いが重要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 口腔粘膜、手のひら、足底などに小さな水疱性発疹が出るのが特徴です。発熱はないか軽度で済むことが多く、発疹のかゆみや痛みはそれほど強くない傾向があります。
- ただし、まれに髄膜炎などの合併症が起こることもあるため、高熱が続く・頭痛・嘔吐・元気がないといった症状があれば、早めの受診をおすすめします。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、比較的強い口内炎・咽頭痛を呈する、手足口病の類縁疾患とも言える夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 6月から急激に報告数が増加し、7月下旬には100件を超える高水準となっていました。
- 今週は59件と前週(108件)から半減しましたが、依然として季節的な流行の最中にあると考えられます。
- 例年の流行と同様に、夏休み中の集団生活・家族内感染を通じての波及が懸念されます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 突然の高熱(39〜40℃台)と喉の強い痛みが典型的な症状です。口の中が痛くて飲水量が減ると脱水につながりやすいため、こまめな水分補給を心がけてください。
- 解熱後もウイルスの排出は数日〜1週間程度続くため、登園・登校の再開は全身状態の回復を目安に判断しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 突然の高熱に続いて、のどの奥(口蓋垂の周囲)に水疱や赤い発疹が出るのが典型です。
- 症状は2〜4日ほどで改善することが多いですが、ぐったりしている・水分が摂れない・高熱が長引くといった場合は受診を検討してください。
- ウイルスの型によって流行の規模や経過に違いがあることも知られています。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は、咽頭痛・結膜炎の併発を特徴とするプール熱の名で知られる夏風邪の一つです。
動向
- 咽頭結膜熱は6月から急増し、7月上旬に70件超を記録しました。
- 今週は28件と4週連続で減少傾向にありますが、依然として夏季の流行圏内にあり、小規模な集団発生には注意が必要です。
- アデノウイルスによる感染であり、家庭や保育施設での二次感染に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 急な発熱、喉の痛み、充血・目やになどの症状が見られたら、早めに医療機関を受診してください。
- アデノウイルスは目や手指を介して感染しやすく、感染力が強いため、タオルや洗面用具の共用は避け、手洗い・うがいの徹底が重要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 突然の高熱、咽頭痛、結膜炎(目の充血・目やに)を3主徴とするウイルス感染症で、プール熱としても知られます。
- 多くは数日で回復しますが、高熱が続く・目の炎症が強い・元気がないなどの症状があれば受診を検討してください。
- アデノウイルス感染症には抗ウイルス薬はなく、対症療法が中心となります。
伝染性紅斑(りんご病)
伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。
動向
- 2025年春以降、持続的に増加していた伝染性紅斑は、今週66件と高水準を維持しています。
- 一時減少した週もありましたが、6月以降は3週ごとの波を繰り返しながら高止まりが続いており、地域的な小流行が持続している可能性があります。
ご家庭で気をつけたいこと
- 頬の赤み(りんご病の由来)や手足のレース状の発疹が典型ですが、発疹が出るころにはすでに感染力はなく、多くは自然に治癒します。
- ただし、妊娠中の初感染では胎児への影響(胎児貧血や流産など)が報告されているため、妊婦の方は注意が必要です。園や学校での流行時には接触機会の制限を検討してください。
臨床的特徴と受診の目安
- 初期は風邪に似た微熱・倦怠感が数日続き、その後、頬が赤くなる特有の発疹が現れます。続いて手足にレース状の発疹が出現するのが典型です。
- かゆみや軽い発熱のみで経過することが多く、対症療法で治癒しますが、免疫不全者や溶血性疾患のある方では重症化の可能性もあります。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。
動向
- ここ数ヶ月は増減を繰り返しながらも高水準で推移しており、今週は44件と再び増加に転じており、引き続き注意が必要です。
- この1ヶ月間は30〜90件の範囲で変動しており、散発的ながら地域全体で持続的な流行が続いている状況です。
- 例年を超える水準で高止まりが続いている点に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 喉の強い痛み・発熱・首のリンパの腫れが典型症状です。家庭内での感染拡大を防ぐため、発症した方は登園・登校の目安となる期間(抗菌薬開始後24時間以降)を守ることが重要です。
- 水分や食事が摂れない場合は、脱水や体力低下にも注意しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 急な発熱と喉の痛みが主症状で、扁桃に白苔(膿)を認めることもあります。咳や鼻水は目立たないことが多く、インフルエンザやアデノウイルスとは異なる臨床像です。
- 迅速検査で診断がつき、抗菌薬治療によって多くは短期間で改善します。猩紅熱様の発疹やイチゴ舌は典型例では稀になりつつあるため、見た目に依存せず判断する必要があります。