兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。
- COVID-19:依然として最も多い感染症で、前週(374件)から大きく減少し236件となりました。ただし、4〜5週平均ではほぼ横ばいで高水準を維持しています。
- 百日咳:直近5週は20〜30件台で推移しており、最新週は23件とやや増加しました。比較的高めの水準が続いています。
- インフルエンザ:57月以降は漸増傾向があり、最新週は58件と前週比でやや増加しました。季節の変わり目で注意が必要です。
- 伝染性紅斑:最新週は55件で前週(74件)から減少しましたが、依然として高水準にあります。妊婦への影響にも留意が必要です。
- RSウイルス感染症:9月以降は50〜70件台で推移していましたが、最新週は49件と前週比で減少しました。中等度の水準を維持しています。
- A群溶連菌咽頭炎:最新週は47件と前週(49件)とほぼ横ばいで、中期的には40〜60件台で安定して推移しています。
- 手足口病:夏季流行のピークを過ぎ、最新週は21件と低めで横ばい推移となっています。
COVID-19
クリニック診療では風邪程度の症状が多いものの、インフルエンザと同程度の辛さを訴える方も珍しくなく、肺炎に至って入院される方もおられます。
最近は「のどの痛み」が目立つ方が多いように思われます。
動向
- 今週の報告数は 236件 で、前週(374件)から大きく減少しました。
- 直近2週間では急増から減少へと転じており、ピークアウトの兆しがみられます。
- 4〜8週の短期的推移では7月以降に増加基調が続き、9月上旬に急増した後、今週は落ち着きをみせています。
- 中期的には2025年2月にも一時的な流行があり、その後いったん沈静化したものの、夏以降に再度上昇して今回の高水準につながっています。
- 過去の経過からは、来週以降もしばらくは高水準を保ちながら推移する可能性があります。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は、外出や登園・登校を控えたり、人の多い屋内ではマスクを着用するなど、感染拡大防止にご協力下さい。
- 家庭内感染を防ぐため、共用スペースの時間差利用・共用スペース利用時のマスク着用・換気の励行を心がけましょう。
- 高齢者や基礎疾患のある方との接触は特に注意してください。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は平均2〜3日、最長で7日程度とされます。発熱、咽頭痛、咳、倦怠感などの症状が出現します。
- 現況は公共交通機関といった日常生活での感染も容易に起こり得るものと推定されます。
- 高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦は重症化リスクが高いため、早めの受診が望まれます。
- 呼吸苦、強い倦怠感などがある場合は速やかに受診してください。
百日咳
百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。
兵庫県は47都道府県中で第9位の報告数と、相対的に多い状況ながら、収束に向かいつつあるようです(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。
なお現在、百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査(LAMP法)は、検査実施4日前後で結果が判明します。
動向
- 今週の報告数は 23件(前週比 +2件、+9.5%)でした。
- 直近では前週からわずかに増加し、下げ止まりの兆候が見られます。
- 過去4〜8週間では、8月以降の減少傾向が続いたのち、直近は小幅な反発が見られます。
- 中期的には、2025年春から夏にかけて急増し、その後減少に転じていますが、依然として例年を大きく上回る水準で推移しています。
- 特に乳児や未接種児では重症化リスクが高いため、引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 数週間にわたり咳が長引く場合は百日咳の可能性もあるため、医療機関での受診を検討してください。
- 咳による夜間の睡眠障害や、乳児への二次感染に特に注意が必要です。
- ワクチン接種歴の確認や、未接種のお子さんには定期接種の機会を逃さないことが大切です。
臨床的特徴と受診の目安
- 百日咳は「カタル期」「痙咳期」「回復期」を経過する呼吸器感染症です。特に乳児では無呼吸発作を起こす危険があります。
- 咳発作は夜間に強く、嘔吐を伴うこともあります。
- 乳児、高齢者、持病のある方は重症化リスクが高いため、早めの受診が推奨されます。
特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
インフルエンザ
動向
- 今週の報告数は 58件(前週比 +8件、+16.0%)でした。
- 直近では前週から増加してますが、9月は50台を維持し続け、流行の兆しは明らかではありません。
- 過去4〜8週間は低水準ながら増加基調にあり、来週以降も報告数が増える可能性があります。
- 中期的には、2025年1月に大規模な流行のピーク(週4,000件超)を記録した後、春から夏にかけては沈静化し、秋に再び小幅な上昇が見られています。
- 季節性インフルエンザの再流行期に向け、今後の推移に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、咳などの症状を呈します。
- 体調不良時には無理をせず休養し、登校・登園や外出を控えることが大切です。
- 手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策が予防につながります。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は1〜2日、発熱を主徴とする急性呼吸器感染症です。
- 高熱が続く、呼吸苦がある、基礎疾患を有する方や高齢者では重症化リスクが高いため早めの受診が推奨されます。
- 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与することが望ましいとされています。
伝染性紅斑(りんご病)
伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。
動向
- 今週の報告数は 55件(前週比 -19件、-25.7%)でした。
- 直近では前週から減少しましたが、依然として高い水準が続いています。
- 過去4〜8週間をみると60〜70件台での推移が中心で、急増は落ち着きつつも高止まり傾向が続いています。
- 中期的には、2025年春以降に報告数が増え始め、夏季から秋口にかけて高水準を維持しています。
- 妊婦さんが感染した場合、胎児への影響が問題となることがあるため、引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 頬に赤い発疹が出現するのが典型で、学校や園で集団発生することがあります。
- 発疹が出る頃には感染性は低下していますが、潜伏期(1〜2週間)は感染を広げやすいため注意が必要です。
- 家族や周囲に妊婦がいる場合は特に感染拡大を防ぐことが重要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 発熱や風邪様症状に続いて、頬部の紅斑(平手打ち様発疹)が出現するのが特徴です。四肢にも網目状の発疹が広がります。
- 発疹出現後は全身状態が比較的良好であることが多いですが、妊婦では胎児感染による重篤な影響(胎児水腫など)が報告されています。
- 妊娠中に発疹や感染が疑われる場合は、速やかに産婦人科に相談してください。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。
RSウイルス感染症
昨冬の流行期以降、消臭の発生報告が続いているインフルエンザですが、この数週間、わずかながら増加傾向とも取れる動向のため掲載しています。
動向
- 今週の報告数は 49件(前週比 -18件、-26.9%)でした。
- 直近では前週から減少しており、9月に一時的に増加した山を超えて落ち着きつつあります。
- 過去4〜8週間では20件前後で推移していたものが9月に急増し、その後は減少に転じています。
- 中期的には、2025年春に大きな流行(週100件前後)を示した後に沈静化し、夏季は低水準で経過していました。秋口の増加は一過性の可能性があります。
- 乳幼児では重症化リスクが高く、入院を要する例もあるため注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱、鼻汁、咳などのかぜ症状から始まり、乳幼児では急速に呼吸状態が悪化することがあります。
- 特に1歳未満の乳児や早産児、心疾患や肺疾患などの基礎疾患を持つお子さんでは重症化リスクが高いため注意が必要です。
- ご家庭では、手洗い・マスク・換気などの基本的な感染対策に加え、同居家族からの持ち込みを防ぐ工夫も大切です。
- 兄弟姉妹や保育園などを通じた家庭内感染が多いため、症状がある場合はできるだけ接触を避けましょう。
- お子様の感染症と認識されることが多いですが、成人のかぜ症候群の腫瘍なウイルスとして知られています。本症のお子様との濃厚接触で成人も重症化するケースがあります。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は2〜8日程度。鼻汁・咳・発熱などの上気道炎症状から始まり、乳幼児では細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
- 乳児では喘鳴(ゼイゼイ)、陥没呼吸、哺乳不良、無呼吸発作などがみられる場合があり、「苦しそうな呼吸」は重症化のサインです。
- 高熱が続く、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が摂れないなどの症状がある場合には早急な受診をご検討下さい。
- 成人では軽症で済むことが多いですが、高齢者や免疫力が低下している方では重症化する可能性があります。
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。
動向
- 今週の報告数は 47件(前週比 -2件、-4.1%)でした。
- 直近では前週からわずかに減少し、やや落ち着きつつあります。
- 過去4〜8週間は30〜50件台で推移しており、明確な増減の傾向はなく、概ね横ばいです。
- 中期的には、2025年前半から夏にかけて断続的に増加し、ピーク時には80件台に達しましたが、その後はやや減少傾向を示しています。
- 典型的な咽頭炎の症状に加えて、まれに合併症(急性腎炎やリウマチ熱など)が起こり得るため、経過観察には注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 喉の痛みや発熱がある場合は無理をせず休養し、学校や園は登校・登園を控えましょう。
- 咳やくしゃみの際はティッシュや肘で口を覆い、手洗い・うがいを徹底してください。
- 兄弟や家族内での感染拡大を防ぐため、食器やタオルの共用を避けましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 急性咽頭炎を呈し、咽頭痛・発熱・扁桃の白苔が典型的です。
- 小児では「イチゴ舌」や発疹(猩紅熱様発疹)を伴うこともありますが、近年は典型的な発疹を欠く例もあります。
- 抗菌薬治療により症状は速やかに改善しますが、放置すると急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症があるため、早期受診が推奨されます。
手足口病
手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 今週の報告数は 21件(前週比 -2件、-8.7%)でした。
- 直近では前週から減少しており、落ち着きを見せています。
- 過去4〜8週間では20〜30件台を中心に推移し、夏季の小流行がやや持続していましたが、ピークアウト後は横ばいから減少傾向にあります。
- 中期的には、2024年秋に大流行があり、その後2025年春までは沈静化、夏に再び小規模な流行を示しました。現在は低水準に留まっています。
- 小児を中心に流行するため、園・学校での集団発生に引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱や手のひら・足底・口腔内に水疱性発疹が出現するのが特徴です。
- 発疹や口内炎による痛みで水分・食事が摂れない場合があるため、脱水に注意してください。
- 兄弟姉妹や園での集団感染を防ぐため、手洗いを徹底しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる夏風邪の一種です。
- 多くは数日で自然軽快しますが、まれに髄膜炎や脳炎などの合併症を来すことがあります。
- 高熱が持続する、嘔吐や強い頭痛がある、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は速やかに受診してください。