兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

- ヘルパンギーナが急増し、今週最大の増加率を記録。COVID-19や手足口病も上昇しており、夏かぜウイルスの複数疾患が同時流行しています。
- 咽頭結膜熱(プール熱)は高止まり傾向。学童~幼児の間で流行が継続しています。
- 百日咳は週ごとの変動はあるものの、全体として高水準が続いています。
- A群溶連菌咽頭炎は6月中旬をピークに3週連続で減少しており、流行はやや落ち着きつつあります。
- 伝染性紅斑は引き続き横ばいで推移しています。
手足口病
夏風邪の一角を占める手足口病が大きく増加してきました。
- 2024年夏に約800件の大流行を記録した手足口病は、その後急速に減少し、2025年春先までほぼ発生のない状態が続いていました。しかし、6月以降は緩やかながら連続して増加傾向にあり、最新週(2025年7月3日集計)では報告数が前週よりもさらに上昇し、明確な再流行の兆候が見られます。
- まだ大きな波には至っていないものの、過去の流行時期(夏季)との一致や集団生活施設でのリスクを踏まえると、今後の拡大にも注意が必要です。口腔内や四肢に発疹が見られた際は、発熱や食欲不振の有無を含めて慎重に観察し、症状が明らかな場合は早めの受診をおすすめします。
主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、手・足・口腔内に小水疱を伴う発疹が出現します。乳幼児での発熱・食欲低下が主症状で、重症化は稀ですが、保育園・幼稚園での広がりに注意が必要です。
COVID-19
COVID-19は個々数週間ほど漸増傾向が続いています。
- COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、2024年夏の大流行以降は急速に沈静化し、2025年初頭には一時的な中規模流行も見られましたが、春以降は比較的落ち着いた状況が続いています。
- しかし、直近の6月下旬から7月にかけては再び報告数が緩やかに上昇しており、今週も前週を上回る増加が見られました。今のところ大きな波には至っていないものの、地域や施設内での集団発生には引き続き注意が必要です。
- 特に高齢者や基礎疾患を有する方への感染は重症化リスクを伴うため、換気・手指衛生・場面に応じたマスク着用など、基本的な感染対策を継続することが望まれます。
急性上気道炎にとどまるものから、インフルエンザのような症状が強いケース、高齢者に多い入院を要するケース、一部で死亡するケースなど幅広い症状を認めるCOVID-19。
いわゆるLong-COVIDや、心血管関連疾患の発症リスクの増加など、中・長期的な問題も指摘されており、かからないのが望ましい感染症です。
百日咳
兵庫県は47都道府県中で東京都・埼玉県に次ぐ第9位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。
- 百日咳は2025年2月以降に明らかな増加傾向を示し、3月下旬から4月初旬にかけて急激に拡大しました。5月以降は50〜70件台を中心とした高水準が継続しており、流行は長期化しています。
- 最新週(7月10日集計)では再び報告数が増加し、直近8週で最も高い水準に達しました。依然として例年を大きく上回る流行規模です。
- 特に乳幼児では重症化リスクが高く、咳込み・顔色不良・哺乳困難などが見られる場合は早期の受診が重要です。周囲の大人の感染にも注意し、家族内での咳症状に気づいたら医療機関へ相談をおすすめします。
百日咳は初期に風邪様の症状を呈し、徐々に特徴的な発作性の咳が出現します。
乳児では無呼吸発作を呈することもあり、早期の診断と治療が重症化の予防につながります。兄姉などからの家庭内感染にも注意が必要です。
最近の兵庫県データでは7〜8割が家庭内感染、残りが学校内での感染と推定されています。
上記に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
伝染性紅斑(りんご病)
りんご病の名前で知られる伝染性紅斑は増加傾向が続いています。
- 伝染性紅斑(りんご病)は、2025年春以降に継続的な増加傾向を示しており、今週の報告数は前週を上回り、過去1年間で最多となる70件台に達しました。先週に見られた一時的な減少は小休止に過ぎなかった可能性が高く、流行の勢いはなお持続しているとみられます。
- 感染の中心は小児で、学童・園児の集団生活を通じた拡大が主因と考えられます。また、妊婦への感染では胎児への影響(胎児水腫など)のリスクもあるため、家庭内への持ち込みに引き続き注意が必要です。
- 発疹出現時にはすでに感染力がほぼ消失していることから、感染拡大防止には発熱や風邪様症状の段階での配慮が重要とされます。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎はこの1年間、かつてなかった高水準を維持し続けています。
- A群溶連菌咽頭炎は、2025年5月下旬から増加傾向を示し、6月中旬に今シーズンのピークを記録しました。その後は3週連続で減少しており、最新週も引き続き減少傾向を維持しています。
- とはいえ、依然として例年の夏期と比較して高い水準を維持しており、流行の勢いが完全に落ち着いたとは言いがたい状況です。例年であれば夏場にかけて沈静化する傾向が見られますが、今年は例外的に夏季も高水準が継続する可能性があります。
- 学童や幼児を中心に広がることが多く、咽頭痛・発熱のほかに倦怠感や腹痛、発疹など多彩な症状が見られる場合もあるため注意が必要です。
- 適切な抗菌薬治療によって感染拡大を防げる疾患であるため、症状が見られた場合は早期受診と確定診断が重要です。
迅速検査だけで診断しにくいのが溶連菌性咽頭炎の難しさですが、
といった条件が揃った時は受診されるのがいいでしょう。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は3大夏風邪の1つです。
- 咽頭結膜熱(プール熱)は、2025年4月以降に明らかな増加傾向を示し、6月に入ってからは急激な上昇が続いていました。先々週には年間最多となる70件台に達しましたが、2週連続で減少しています。
- ただし、依然として年間を通じて最も高い水準に近く、流行のピークを過ぎたと断定するには早計です。例年、7月〜8月にかけて流行が続く傾向があるため、今後の再上昇にも警戒が必要です。
- 症状は咽頭痛・結膜炎(目の充血)・発熱が三徴で、プールを介した感染のほか、飛沫・接触でも容易に拡がります。
- 集団生活を送る園児・学童での広がりに注意し、目の充血や発熱がある場合は登園・登校を控えることが重要です。
咽頭結膜熱は名前の通り、
を呈する、主に学童期までに好発する感染症です。
飛沫感染・接触感染により感染し、プール熱の俗称が示すようにプールにおいてはタオルや、プールの水が感染源となり得ると考えられています。
ただし、昨今はタオルを共有する機会が減ったり、プールの塩素濃度の適正化などによりプールを地盤とした流行はないようです。
インフルエンザのような迅速抗原検査キットがありますが、精度が十分とは言えず、陰性であっても咽頭結膜熱を否定し得ません(陽性の場合は高い精度で咽頭結膜熱と診断し得ます)。
手足口病
夏風邪の一角を占める手足口病。
- 2024年夏に約800件の大流行を記録した手足口病は、その後急激に減少し、2025年春先まではほぼ報告のない状態が続いていました。
- しかしながら、2025年6月以降に連続した増加傾向がみられており、最新週(7月3日集計)でも前週を上回る報告数が確認されました。これにより、小規模ながら明確な立ち上がりの兆しが現れたといえます。
- 現時点では流行の初動段階と考えられ、大きな波には至っていませんが、過去の流行パターン(夏季に急増)と一致するタイミングでの上昇であり、今後のさらなる拡大に注意が必要です。
- 口腔内の痛み・発熱・四肢の発疹・食欲低下などが見られる場合は、早めに医療機関を受診し、登園・登校の判断にご留意ください。
主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、手・足・口腔内に小水疱を伴う発疹が出現します。乳幼児での発熱・食欲低下が主症状で、重症化は稀ですが、保育園・幼稚園での広がりに注意が必要です。