芦屋市・西宮市・神戸市の感染症情報(10/16)

兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市西宮市神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

「2025年8月下旬から10月中旬にかけての芦屋市・西宮市・神戸市における主要感染症(8疾患)の週別報告数推移グラフ。横軸は週(8/31〜10/12)、左縦軸はCOVID-19以外の感染症、右縦軸はCOVID-19の報告数を示す。伝染性紅斑(緑)とA群溶連菌咽頭炎(黄)が上昇基調、インフルエンザ(青緑)は変動しつつ高水準。COVID-19(青)は減少傾向。咽頭結膜熱(赤)と百日咳(橙)は低水準で推移し、水痘(薄赤)はやや増加している。
  • 水痘:25件と前週(5件)から急増しました。長期的には低水準が続いていましたが、今週は目立った増加となっています。
  • 伝染性紅斑:82件と高水準を継続しており、妊婦への影響にも引き続き注意が必要です。中期的にも上昇傾向が続いています。
  • 百日咳:24件と前週(12件)の倍増。報告数自体は中程度ですが、増加傾向がみられます。乳幼児や妊婦では重症化に注意が必要です。
  • インフルエンザ:72件と依然として高めの水準を維持しています。前週(93件)からやや減少したものの、過去8週間平均(57件)を上回っており、季節的な立ち上がりに入っています。
  • A群溶連菌咽頭炎:65件と前週(55件)からさらに増加し、高水準を維持しています。過去2週比でも顕著な上昇がみられます。
  • COVID-19:報告数は123件と、前週(162件)から減少しました。8週間平均を下回る水準で推移しており、流行が収束しつつあると考えられます。
  • RSウイルス感染症:38件と前週(57件)から減少しました。ピークを過ぎつつありますが、依然として報告数はやや多い水準です。
  • 咽頭結膜熱:22件と前週(28件)からやや減少しました。ここ数週は横ばい〜微減傾向で推移しています。

目次

水痘

2024年11月から2025年10月までの水痘報告数の週別推移グラフ。2025年初頭に15件前後のピークを示した後いったん減少し、5月と10月に小規模な再上昇。特に10月中旬には25件と急増している。

水痘は、「みずぼうそう」の俗称で知られる、頭皮から脚まで全身性に水疱を伴う皮疹を生ずるウイルス感染症です。

動向

  • 今週の報告数は 25件 で、s今週の報告数は 25件 で、前週(5件)から急増しました。しました。
  • 直近4〜8週の短期的推移では、9月以降は10件前後で推移していましたが、今週になって突出した増加を示しています。
  • 中期的には2024年冬季から2025年初頭にかけて流行の山があり、春以降はいったん落ち着いていました。5月と今回10月中旬に小さなピークがみられ、季節変動の再活発化が示唆されます。
  • 過去の傾向からは、秋季に一時的な増加を示すことがあり、来週以降も高水準で推移する可能性があります。

伝染性紅斑(りんご病)

2024年11月から2025年10月までの水痘報告数の週別推移グラフ。2025年初頭に15件前後のピークを示した後いったん減少し、5月と10月に小規模な再上昇。特に10月中旬には25件と急増している。

伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。

動向

  • 今週の報告数は82件で、前週(64件)から増加しました。
  • 直近2週では緩やかな上昇が続いており、高水準を維持しています。
  • 短期的(4〜8週)には、夏以降一時的な減少を挟みつつも全体として上昇傾向が明確で、8月以降は70〜80件台で推移しています。
  • 中期的(半年程度)には、2025年春から初夏にかけて上昇に転じ、夏以降も高い水準を維持しています。
  • 過去の傾向からは、秋季にも高水準が続くことが多く、今後もしばらくは高止まりの状態が続く可能性があります。
  • 妊婦さんが感染すると胎児に影響を及ぼすことがあるため、引き続き注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 頬に赤い発疹が出現するのが典型で、学校や園で集団発生することがあります
  • 発疹が出る頃には感染性は低下していますが、潜伏期(1〜2週間)は感染を広げやすいため注意が必要です。
  • 家族や周囲に妊婦がいる場合は特に感染拡大を防ぐことが重要です

臨床的特徴と受診の目安

  • 発熱や風邪様症状に続いて、頬部の紅斑(平手打ち様発疹)が出現するのが特徴です。四肢にも網目状の発疹が広がります。
  • 発疹出現後は全身状態が比較的良好であることが多いですが、妊婦では胎児感染による重篤な影響(胎児水腫など)が報告されています。
  • 妊娠中に発疹や感染が疑われる場合は、速やかに産婦人科に相談してください

妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい

伝染性紅斑とは

別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。

大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。

合併症

胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。

骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。

感染対策

りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。

具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。

百日咳

024年10月から2025年10月までの百日咳の週別報告数推移グラフ。2025年春以降に急増し、夏季に60〜70件台のピークを形成。その後は減少傾向を示し、10月中旬時点では20件台で推移している。

百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。

兵庫県は47都道府県中で第13位の報告数と、相対的に多い状況ながら、収束には向かいつつあるようです(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。

なお現在、百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査(LAMP法)は、検査実施4日前後で結果が判明します。

動向

  • 今週の報告数は24件で、前週(12件)から倍増しました。
  • 直近2週ではやや持ち直しがみられますが、依然として夏季のピーク期(7〜8月の60〜70件台)と比べて低水準です。
  • 短期的(4〜8週)には減少傾向が続いており、流行の収束過程にあると考えられます。
  • 中期的(半年程度)には、2025年春から初夏にかけて報告数が急増し、6〜8月を中心に大きな流行を形成しました。
  • 過去の推移からは、秋以降は一時的に報告が減少する傾向があり、今後も落ち着いた状態が続く可能性があります。
  • 乳幼児や妊婦では重症化のリスクがあるため、家庭内での咳エチケットや早期受診が重要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 数週間にわたり咳が長引く場合は百日咳の可能性もあるため、医療機関での受診を検討してください。
  • 咳による夜間の睡眠障害や、乳児への二次感染に特に注意が必要です。
  • ワクチン接種歴の確認や、未接種のお子さんには定期接種の機会を逃さないことが大切です。

臨床的特徴と受診の目安

  • 百日咳は「カタル期」「痙咳期」「回復期」を経過する呼吸器感染症です。特に乳児では無呼吸発作を起こす危険があります。
  • 咳発作は夜間に強く、嘔吐を伴うこともあります。
  • 乳児、高齢者、持病のある方は重症化リスクが高いため、早めの受診が推奨されます。

特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。

  • 連続する短い咳に続けて、息を吸うときに「ヒュー」と音がする
  • 周囲に百日咳と診断された人やしつこい咳の人がいる
  • しつこい咳が続く乳幼児の同居者

インフルエンザ

2024年10月から2025年10月までのインフルエンザ報告数の週別推移グラフ。2024年末から2025年初頭にかけて急増し、1月に約4000件でピークを形成。その後急減して春以降は低水準で推移し、秋にかけてやや上昇傾向を示している。

動向

  • 今週の報告数は72件で、前週(93件)からやや減少しました。
  • 直近2週では小幅な増減を繰り返しており、全体としては高めの水準を維持しています。
  • 短期的(4〜8週)には、8月下旬から徐々に上昇し、10月上旬にかけて報告数が増加しましたが、今週は一服しています。
  • 中期的(半年程度)には、2024年冬から2025年初頭にかけて大規模な流行(1月に4000件超)があり、その後春以降は低水準で推移していました。
  • 過去の傾向からは、今後秋冬シーズンの到来に伴い再び増加に転じる可能性があります。
  • 高齢者や基礎疾患のある方では重症化リスクが高いため、早期のワクチン接種と体調管理が重要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、咳などの症状を呈します。
  • 体調不良時には無理をせず休養し、登校・登園や外出を控えることが大切です。
  • 手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策が予防につながります。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は1〜2日、発熱を主徴とする急性呼吸器感染症です。
  • 高熱が続く、呼吸苦がある、基礎疾患を有する方や高齢者では重症化リスクが高いため早めの受診が推奨されます。
  • 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与することが望ましいとされています。

溶連菌性咽頭炎

2024年10月から2025年10月までのA群溶連菌咽頭炎の週別報告数推移グラフ。2025年春から夏にかけて複数の山があり、6〜7月にかけてピークを形成。8月以降いったん減少したのち、10月に再び増加傾向を示している。

溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。

動向

  • 今週の報告数は65件で、前週(55件)から増加しました。
  • 直近2週では上昇傾向がみられ、報告数は再び高水準に戻りつつあります
  • 短期的(4〜8週)には、8月中旬以降いったん減少した後、9月下旬から再び増加に転じています。
  • 中期的(半年程度)には、2025年春から初夏にかけて報告数が増加し、6〜7月に複数回のピークを形成しました。その後やや落ち着いていましたが、秋口から再び上昇傾向を示しています。
  • 過去の経過からは、季節の変わり目にも一定数の流行がみられる傾向があり、今後もしばらくは高水準で推移する可能性があります。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 喉の痛みや発熱がある場合は無理をせず休養し、学校や園は登校・登園を控えましょう。
  • 咳やくしゃみの際はティッシュや肘で口を覆い、手洗い・うがいを徹底してください。
  • 兄弟や家族内での感染拡大を防ぐため、食器やタオルの共用を避けましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 急性咽頭炎を呈し、咽頭痛・発熱・扁桃の白苔が典型的です。
  • 小児では「イチゴ舌」や発疹(猩紅熱様発疹)を伴うこともありますが、近年は典型的な発疹を欠く例もあります。
  • 抗菌薬治療により症状は速やかに改善しますが、放置すると急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症があるため、早期受診が推奨されます。

COVID-19

2024年10月から2025年10月までのCOVID-19週別報告数推移グラフ。2025年初頭に200件超の流行があり、春に減少した後、夏以降再上昇。9月下旬に約400件でピークを示し、10月中旬には減少に転じている。

クリニック診療では風邪程度の症状が多いものの、インフルエンザと同程度の辛さを訴える方も珍しくなく、肺炎に至って入院される方もおられます。

最近は「のどの痛み」が目立つ方が多いように思われます。

動向

  • 今週の報告数は123件で、前週(162件)から減少しました。
  • 直近2週では連続して減少しており、ピークを過ぎて落ち着きつつあります。
  • 短期的(4〜8週)には、8月下旬から急増し、9月下旬に約400件でピークを形成した後、明確な減少傾向に転じていますが、絶対数が多いことにご留意下さい
  • 中期的(半年程度)には、2025年初頭(1〜2月)にも一時的な流行がみられ、その後いったん沈静化しましたが、夏以降に再び増加し、秋口に大きな波を迎えました。
  • 過去の経過からは、秋の流行後にいったん減少したのち、冬季に再上昇する傾向があり、今後も一定の警戒が必要です。
  • 基礎疾患のある方や高齢者では重症化リスクが高いため、ワクチン接種と体調管理を継続することが重要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は、外出や登園・登校を控えたり、人の多い屋内ではマスクを着用するなど、感染拡大防止にご協力下さい
  • 家庭内感染を防ぐため、共用スペースの時間差利用共用スペース利用時のマスク着用換気の励行を心がけましょう。
  • 高齢者や基礎疾患のある方との接触は特に注意してください。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は平均2〜3日、最長で7日程度とされます。発熱、咽頭痛、咳、倦怠感などの症状が出現します。
  • 現況は公共交通機関といった日常生活での感染も容易に起こり得るものと推定されます。
  • 高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦は重症化リスクが高いため、早めの受診が望まれます。
  • 呼吸苦、強い倦怠感などがある場合は速やかに受診してください。

RSウイルス感染症

2024年10月から2025年10月までのRSウイルス感染症の週別報告数推移グラフ。2025年初春に約100件のピークを示した後、春から夏は低水準で推移。9月以降に再び増加し、9月下旬にピークを迎えた後、10月中旬にかけて減少している。

昨冬の流行期以降、消臭の発生報告が続いているインフルエンザですが、この数週間、わずかながら増加傾向とも取れる動向のため掲載しています。

動向

  • 今週の報告数は38件で、前週(57件)から減少しました。
  • 直近2週では減少が続いており、ピークを過ぎた可能性があります。
  • 短期的(4〜8週)には、9月上旬から急増し、9月下旬にかけて60件前後でピークを形成した後、やや落ち着いてきていますが、依然高水準で推移しています
  • 中期的(半年程度)には、2025年初春に100件前後の大きな流行がみられ、その後は春から夏にかけて低水準で推移し、再び秋に上昇しました。
  • 過去の傾向からは、秋季の小流行の後に一時的に沈静化するケースが多く、今後は減少傾向が続く可能性があります。
  • 乳幼児では重症化することがあり、家庭内や保育施設での感染拡大に注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、鼻汁、咳などのかぜ症状から始まり、乳幼児では急速に呼吸状態が悪化することがあります
  • 特に1歳未満の乳児や早産児、心疾患や肺疾患などの基礎疾患を持つお子さんでは重症化リスクが高いため注意が必要です。
  • ご家庭では、手洗い・マスク・換気などの基本的な感染対策に加え、同居家族からの持ち込みを防ぐ工夫も大切です。
  • 兄弟姉妹や保育園などを通じた家庭内感染が多いため、症状がある場合はできるだけ接触を避けましょう。
  • お子様の感染症と認識されることが多いですが、成人のかぜ症候群の腫瘍なウイルスとして知られています。本症のお子様との濃厚接触で成人も重症化するケースがあります

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は2〜8日程度。鼻汁・咳・発熱などの上気道炎症状から始まり、乳幼児では細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
  • 乳児では喘鳴(ゼイゼイ)、陥没呼吸、哺乳不良、無呼吸発作などがみられる場合があり、「苦しそうな呼吸」は重症化のサインです。
  • 高熱が続く、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が摂れないなどの症状がある場合には早急な受診をご検討下さい。
  • 成人では軽症で済むことが多いですが、高齢者や免疫力が低下している方では重症化する可能性があります

咽頭結膜熱

2024年10月から2025年10月までの咽頭結膜熱の週別報告数推移グラフ。2025年初夏から夏季にかけて報告数が増加し、7月に約70件でピークを形成。その後は減少し、9月以降は20〜30件台で推移している。

動向

  • 今週の報告数は22件で、前週(28件)からやや減少しました。
  • 直近2週では減少傾向にあり、全体として落ち着いた状態にあります。
  • 短期的(4〜8週)には、8月の減少後に9月中旬に一時的な増加を示しましたが、その後は横ばい〜微減傾向で推移しています
  • 中期的(半年程度)には、2025年6〜7月にかけて70件台のピークがあり、夏季以降は徐々に減少しました。
  • 過去の傾向からは、秋季には大きな流行は起こりにくく、今後もしばらくは安定した状況が続くと考えられます。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、咽頭痛、結膜の充血や目やになどの症状がみられます。
  • 発症初期は感染力が強く、家庭や学校内で広がることがあります。手洗い・タオルの共用を避けるなど、接触感染対策が重要です。
  • 体調が悪い時は無理をせず休養し、発熱や目の充血がある間は登校・登園を控えましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期はおおむね5〜7日で、発熱・咽頭痛・結膜炎を主徴とするアデノウイルス感染症です。
  • 高熱が3〜5日程度続くことがあり、目の充血や痛みを伴う場合には眼科受診が必要になることもあります。
  • 症状が強い場合や長引く場合、集団生活に復帰する前には医療機関での診断を受けることが望まれます。