兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市・西宮市・神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

- COVID-19:短期的には増加傾向が続いており、今週は269件と依然として最多の感染症です。夏以降は高水準を維持しています。
- 百日咳:春以降高水準が持続しています。今週は33件と前週(44件)から減少しましたが、依然として注意が必要です。
- インフルエンザ:今週59件と、先週(15件)から約4倍に急増しました。絶対数も目立つ水準となり、流行期入りが懸念されます。
- RSウイルス感染症:今週48件と、先週(11件)から急増しました。直近で顕著な増加がみられ、注意が必要です。
- ヘルパンギーナ:流行のピークを過ぎつつありますが、今週41件とまだやや高い水準です。
- 手足口病:夏季ピークを越え、減少傾向が続いており、今週は14件でした。
- 咽頭結膜熱:今週26件と減少傾向で、流行は収束に向かいつつあります。
- 伝染性紅斑:高水準が持続しており、妊婦への影響にも留意が必要です。
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:37件と一定の流行が継続しています。
COVID-19

クリニック診療では風邪程度の症状が多いものの、インフルエンザと同程度の辛さを訴える方も珍しくなく、肺炎に至って入院される方もおられます。
最近は「のどの痛み」が目立つ方が多いように思われます。
動向
- 今週の報告数は269件で、前週(259件)から増加しています。
- 短期的(4〜8週間):増加傾向が続いており、直近も高水準です。
- 中期的(半年程度):春〜初夏にかけて減少した後、7月以降は再び増加に転じています。
- 今後も高水準が続く可能性があり、引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は、外出や登園・登校を控えたり、人の多い屋内ではマスクを着用するなど、感染拡大防止にご協力下さい。
- 家庭内感染を防ぐため、共用スペースの時間差利用・共用スペース利用時のマスク着用・換気の励行を心がけましょう。
- 高齢者や基礎疾患のある方との接触は特に注意してください。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は平均2〜3日、最長で7日程度とされます。発熱、咽頭痛、咳、倦怠感などの症状が出現します。
- 現況は公共交通機関といった日常生活での感染も容易に起こり得るものと推定されます。
- 高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦は重症化リスクが高いため、早めの受診が望まれます。
- 呼吸苦、強い倦怠感などがある場合は速やかに受診してください。
百日咳
百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。
兵庫県は47都道府県中で第11位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。
なお現在、百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査(LAMP法)は、検査実施4日前後で結果が判明します。
動向
- 今週の報告数は33件で、前週(44件)から減少しました。
- 短期的(4〜8週間)には高水準ながら変動が続いており、直近ではやや減少傾向です。
- 中期的(半年程度)には春から夏にかけて大きく増加し、その後も高水準が持続しています。
- 今後もしばらくは一定の報告が続く可能性があり、引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 数週間にわたり咳が長引く場合は百日咳の可能性もあるため、医療機関での受診を検討してください。
- 咳による夜間の睡眠障害や、乳児への二次感染に特に注意が必要です。
- ワクチン接種歴の確認や、未接種のお子さんには定期接種の機会を逃さないことが大切です。
臨床的特徴と受診の目安
- 百日咳は「カタル期」「痙咳期」「回復期」を経過する呼吸器感染症です。特に乳児では無呼吸発作を起こす危険があります。
- 咳発作は夜間に強く、嘔吐を伴うこともあります。
- 乳児、高齢者、持病のある方は重症化リスクが高いため、早めの受診が推奨されます。
特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。
インフルエンザ
昨冬の流行期以降、消臭の発生報告が続いているインフルエンザですが、この数週間、わずかながら増加傾向とも取れる動向のため掲載しています。
動向
- 今週の報告数は59件で、前週(15件)から急増しました。
- 短期的(4〜8週間)には夏季としては異例の増加傾向を示しています。
- 中期的(半年程度)には、今冬に大規模流行がみられた後、春から夏にかけて低水準が続いていましたが、直近で再び増加に転じています。
- 来週以降も散発的な流行拡大の可能性があり、注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、咳などの症状を呈します。
- 体調不良時には無理をせず休養し、登校・登園や外出を控えることが大切です。
- 手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策が予防につながります。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は1〜2日、発熱を主徴とする急性呼吸器感染症です。
- 高熱が続く、呼吸苦がある、基礎疾患を有する方や高齢者では重症化リスクが高いため早めの受診が推奨されます。
- 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与することが望ましいとされています。
RSウイルス感染症
昨冬の流行期以降、消臭の発生報告が続いているインフルエンザですが、この数週間、わずかながら増加傾向とも取れる動向のため掲載しています。
動向
- 今週の報告数は48件で、前週(11件)から急増し、これまで続いていた低水準の状態から急激な増加に転じています。
- 中期的(半年程度)には春に流行のピークを迎えた後、夏季は落ち着いていましたが、再び上昇傾向が明らかになっています。
- 来週以降も流行拡大の可能性があるため、注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、咳などの症状を呈します。
- 体調不良時には無理をせず休養し、登校・登園や外出を控えることが大切です。
- 手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策が予防につながります。
臨床的特徴と受診の目安
- 潜伏期は1〜2日、発熱を主徴とする急性呼吸器感染症です。
- 高熱が続く、呼吸苦がある、基礎疾患を有する方や高齢者では重症化リスクが高いため早めの受診が推奨されます。
- 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与することが望ましいとされています。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、比較的強い口内炎・咽頭痛を呈する、手足口病の類縁疾患とも言える夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 今週の報告数は41件で、前週(34件)から増加し、8/21の低値(11件)からの持ち直しが続いています。
- 短期的(4〜8週間)には、7月下旬のピーク後に急減したのち小幅な再増加局面で、当面は散発的な報告の継続が見込まれます。
- 中期的(半年程度)には、7月下旬に100件前後でピークを形成し、その後は減少基調に移行しています。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱と咽頭痛が主症状で、口蓋や咽頭に小さな水疱が出現します。
- 飲食がしづらくなり水分不足に陥ることがあるため、こまめな水分摂取を励行してください。
- 家庭内での感染拡大を防ぐため、食器やタオルは共有せず、手洗いを徹底しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- コクサッキーウイルスA群による小児の夏風邪の一種で、潜伏期は3〜5日程度です。
- 多くは軽症で自然軽快しますが、乳幼児では高熱により脱水やけいれんのリスクがあります。
- 水分摂取が困難、ぐったりしている、けいれんを伴う場合は速やかに受診してください。
手足口病
手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。
動向
- 今週の報告数は14件で、前週(29件)から減少し、夏季流行の収束傾向が明確になっています。
- 短期的(4〜8週間)には7月から8月にかけて30〜40件前後で小規模な流行が続きましたが、直近は減少傾向です。
- 中期的には例年どおり秋以降は低水準で推移する見込みで、大きな流行にはつながりにくいと考えられます。
ご家庭で気をつけたいこと
- 発熱や手のひら・足底・口腔内に水疱性発疹が出現するのが特徴です。
- 発疹や口内炎による痛みで水分・食事が摂れない場合があるため、脱水に注意してください。
- 兄弟姉妹や園での集団感染を防ぐため、手洗いを徹底しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる夏風邪の一種です。
- 多くは数日で自然軽快しますが、まれに髄膜炎や脳炎などの合併症を来すことがあります。
- 高熱が持続する、嘔吐や強い頭痛がある、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は速やかに受診してください。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は、咽頭痛・結膜炎の併発を特徴とするプール熱の名で知られる夏風邪の一つです。
動向
- 今週の報告数は26件で、前週(14件)から増加し、8月の低水準から持ち直しています。
- 短期的(4〜8週間)には7月のピーク後に減少していましたが、直近で再び上昇傾向にあります。
- 中期的(半年程度)には春以降に流行が拡大し、7月に70件を超えるピークを示した後、減少基調に移行していました。
- 来週以降も散発的な報告が続く可能性があり、完全な収束にはなお時間を要する見込みです。
ご家庭で気をつけたいこと
- 高熱・咽頭痛・結膜充血が主症状です。発熱時は登園・登校を控えましょう。
- プールでの集団感染が知られており、今後も衛生管理が重要です。
- 手洗い・タオルの共用を避け、家庭内でも感染を広げないよう注意しましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 発熱・咽頭痛・結膜炎を3主徴とするアデノウイルス感染症です。 潜伏期は約5〜7日。
- 強い咽頭痛と結膜充血を伴いますが、多くは自然軽快します。
- 高熱が続く場合や、結膜の痛み・目やにの増加が強い場合は受診を推奨します。
伝染性紅斑(りんご病)
伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。
動向
- 今週の報告数は69件で、前週(61件)から増加し、8月中旬のお盆での低下(30件)から明確に持ち直しています。
- 短期的(4〜8週間)には7月以降60件前後の高水準で推移しており、直近では再び増加傾向が示されています。
- 中期的(半年程度)には春から継続的に増加し、夏以降も高水準が続いています。
- 妊婦が感染すると胎児への影響(胎児水腫など)が報告されており、流行が続く中では特に注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 頬に赤い発疹が出現するのが典型で、学校や園で集団発生することがあります。
- 発疹が出る頃には感染性は低下していますが、潜伏期(1〜2週間)は感染を広げやすいため注意が必要です。
- 家族や周囲に妊婦がいる場合は特に感染拡大を防ぐことが重要です。
臨床的特徴と受診の目安
- 発熱や風邪様症状に続いて、頬部の紅斑(平手打ち様発疹)が出現するのが特徴です。四肢にも網目状の発疹が広がります。
- 発疹出現後は全身状態が比較的良好であることが多いですが、妊婦では胎児感染による重篤な影響(胎児水腫など)が報告されています。
- 妊娠中に発疹や感染が疑われる場合は、速やかに産婦人科に相談してください。
妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい
別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。
大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。
合併症
胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。
骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。
感染対策
りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。
具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。
溶連菌性咽頭炎
溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。
動向
- 今週の報告数は37件で、前週(40件)からわずかに減少しました。
- 短期的(4〜8週間)には7月後半以降40件前後とやや高めの水準で推移しており、直近では大きな増減は見られません。
- 中期的(半年程度)には春から夏にかけてやや増加した後、安定した水準での推移が続いています。
- 学校や園生活を通じて流行が広がることがあり、集団生活での予防策には引き続き注意が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
- 喉の痛みや発熱がある場合は無理をせず休養し、学校や園は登校・登園を控えましょう。
- 咳やくしゃみの際はティッシュや肘で口を覆い、手洗い・うがいを徹底してください。
- 兄弟や家族内での感染拡大を防ぐため、食器やタオルの共用を避けましょう。
臨床的特徴と受診の目安
- 急性咽頭炎を呈し、咽頭痛・発熱・扁桃の白苔が典型的です。
- 小児では「イチゴ舌」や発疹(猩紅熱様発疹)を伴うこともありますが、近年は典型的な発疹を欠く例もあります。
- 抗菌薬治療により症状は速やかに改善しますが、放置すると急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症があるため、早期受診が推奨されます。