芦屋市・西宮市・神戸市の感染症情報(10/9)

兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市西宮市神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

2025年8月下旬から10月上旬にかけての芦屋市・西宮市・神戸市における感染症報告数の推移を示した折れ線グラフ。 COVID-19(青線)は9月上旬をピークに減少傾向、インフルエンザ(水色)は10月に入り急増。伝染性紅斑(緑)は高水準で横ばい。A群溶連菌咽頭炎(黄)は一時減少後10月に再上昇。咽頭結膜熱(赤)はやや増加。百日咳(橙)は9月中旬以降減少している。
  • COVID-19:依然として最多報告疾患であり、前週183件から162件へと減少しました(約11%減)。8月下旬以降は漸減傾向が続いています。
  • インフルエンザ:9月中は50〜60件台で横ばいでしたが、今週は93件となり明確に増加しました。秋季に入り、流行が立ち上がりつつありようにも思われます
  • 伝染性紅斑:前週59件から64件へとやや増加し、高水準を維持しています。妊婦への影響にも引き続き留意が必要です。
  • 百日咳:前週25件から12件へと半減しました。8月中旬以降の高水準からは減少傾向がみられます
  • RSウイルス感染症:9月にかけて減少していましたが、今週は40件から57件へと増加し、やや下げ止まりつつあります。
  • A群溶連菌咽頭炎:前週の28件から55件へと増加しましたが、8月以降はおおむね40〜60件台で推移しており、全体としては横ばい傾向です。
  • 咽頭結膜熱:前週18件から28件へと増加しました。夏季に多い疾患ですが、秋にも散発的な増加がみられることがあります。

目次

COVID-19

2024年11月から2025年10月までの新型コロナウイルス感染症報告数の推移を示す折れ線グラフ。 2025年2月頃に一度流行の山があり、春から初夏にかけて低下。7月以降再び増加して9月中旬に約400件でピークを迎え、その後10月にかけて減少している。

クリニック診療では風邪程度の症状が多いものの、インフルエンザと同程度の辛さを訴える方も珍しくなく、肺炎に至って入院される方もおられます。

最近は「のどの痛み」が目立つ方が多いように思われます。

動向

  • 今週の報告数は162件で、前週(183件)から減少しました。
  • 直近2週連続で減少しており、短期的にはピークアウトの兆しがみられます。
  • ただし依然として高水準の報告数であることに変わりはありません。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は、外出や登園・登校を控えたり、人の多い屋内ではマスクを着用するなど、感染拡大防止にご協力下さい
  • 家庭内感染を防ぐため、共用スペースの時間差利用共用スペース利用時のマスク着用換気の励行を心がけましょう。
  • 高齢者や基礎疾患のある方との接触は特に注意してください。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は平均2〜3日、最長で7日程度とされます。発熱、咽頭痛、咳、倦怠感などの症状が出現します。
  • 現況は公共交通機関といった日常生活での感染も容易に起こり得るものと推定されます。
  • 高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦は重症化リスクが高いため、早めの受診が望まれます。
  • 呼吸苦、強い倦怠感などがある場合は速やかに受診してください。

インフルエンザ

2024年11月から2025年10月までのインフルエンザ報告数の推移を示す折れ線グラフ。2025年1〜2月にかけて約4,000件でピークを形成し、その後減少。秋以降に再び報告が増え始めている。

動向

  • 今週の報告数は93件で、前週(60件)から増加しました。
  • 9月中は50〜60件台で横ばいでしたが、今週に入り明確な増加がみられます
  • 短期的には、秋季に入り流行が立ち上がりつつある段階です。
  • 中期的には、2025年1〜2月にかけて大規模な流行(ピーク時約4,000件)がみられた後、春から夏にかけて沈静化していました。
  • 過去の季節的推移から、今後しばらくは報告数の増加が続く可能性があります。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、咳などの症状を呈します。
  • 体調不良時には無理をせず休養し、登校・登園や外出を控えることが大切です。
  • 手洗い・マスク・換気など、基本的な感染対策が予防につながります。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は1〜2日、発熱を主徴とする急性呼吸器感染症です。
  • 高熱が続く、呼吸苦がある、基礎疾患を有する方や高齢者では重症化リスクが高いため早めの受診が推奨されます。
  • 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与することが望ましいとされています。

伝染性紅斑(りんご病)

2024年11月から2025年10月までの伝染性紅斑の報告数推移を示す折れ線グラフ。2025年春以降に増加し、夏から秋にかけて50〜70件前後の高水準で推移している。

伝染性紅斑は、ほっぺたがりんごのように赤くなるのを特徴とする、りんご病の名で知られる感染症です。

動向

  • 今週の報告数は64件で、前週(59件)からやや増加しました。
  • 直近2週間は60件前後で推移しており、高水準を維持しています。
  • 短期的には、8月以降おおむね50〜70件台で高止まりしており、明確な減少傾向はみられません。
  • 中期的には、2025年春頃から報告が増加し、夏以降も比較的高い水準が続いています。
  • 妊婦が感染すると胎児への影響が報告されているため、引き続き注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 頬に赤い発疹が出現するのが典型で、学校や園で集団発生することがあります
  • 発疹が出る頃には感染性は低下していますが、潜伏期(1〜2週間)は感染を広げやすいため注意が必要です。
  • 家族や周囲に妊婦がいる場合は特に感染拡大を防ぐことが重要です

臨床的特徴と受診の目安

  • 発熱や風邪様症状に続いて、頬部の紅斑(平手打ち様発疹)が出現するのが特徴です。四肢にも網目状の発疹が広がります。
  • 発疹出現後は全身状態が比較的良好であることが多いですが、妊婦では胎児感染による重篤な影響(胎児水腫など)が報告されています。
  • 妊娠中に発疹や感染が疑われる場合は、速やかに産婦人科に相談してください

妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい

伝染性紅斑とは

別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。

大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。

合併症

胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。

骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。

感染対策

りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。

具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。

百日咳

2024年11月から2025年10月までの百日咳報告数の推移を示す折れ線グラフ。2025年春から増加し、夏季にかけて60〜70件台の高水準を記録。その後は減少傾向にある。

百日咳は、長引くから咳を特徴とし、2025年に現在進行系で大流行をきたしている呼吸器感染症です。

兵庫県は47都道府県中で第4位の報告数と、相対的に多い状況ながら、収束には向かいつつあるようです(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。

なお現在、百日咳の発症早期の検査として最も有用と考えられるDNA検査(LAMP法)は、検査実施4日前後で結果が判明します。

動向

  • 今週の報告数は12件で、前週(25件)から減少しました。
  • 直近2週間はいずれも減少しており、流行は落ち着きつつあります
  • 短期的には、8月以降緩やかな減少が続いています。
  • 中期的には、2025年春以降に増加し、6〜7月にかけて60〜70件台で高水準となりましたが、その後は減少に転じています。
  • 乳児では重症化することがあり、家庭内での感染拡大防止に引き続き注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 数週間にわたり咳が長引く場合は百日咳の可能性もあるため、医療機関での受診を検討してください。
  • 咳による夜間の睡眠障害や、乳児への二次感染に特に注意が必要です。
  • ワクチン接種歴の確認や、未接種のお子さんには定期接種の機会を逃さないことが大切です。

臨床的特徴と受診の目安

  • 百日咳は「カタル期」「痙咳期」「回復期」を経過する呼吸器感染症です。特に乳児では無呼吸発作を起こす危険があります。
  • 咳発作は夜間に強く、嘔吐を伴うこともあります。
  • 乳児、高齢者、持病のある方は重症化リスクが高いため、早めの受診が推奨されます。

特に、以下に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。

  • 連続する短い咳に続けて、息を吸うときに「ヒュー」と音がする
  • 周囲に百日咳と診断された人やしつこい咳の人がいる
  • しつこい咳が続く乳幼児の同居者

RSウイルス感染症

2024年11月から2025年10月までのRSウイルス感染症報告数の推移を示す折れ線グラフ。2025年3月頃に100件前後の流行があり、その後減少。8月以降に再び上昇し、10月時点では小幅な増減を繰り返している。

昨冬の流行期以降、消臭の発生報告が続いているインフルエンザですが、この数週間、わずかながら増加傾向とも取れる動向のため掲載しています。

動向

  • 今週の報告数は57件で、前週(40件)から増加しました。
  • 9月中は減少傾向でしたが、今週はやや持ち直しがみられます。
  • 短期的には、8月以降いったん増加した後9月に減少し、現在は小幅な増減を繰り返しています。
  • 中期的には、2025年3月にかけて100件前後の流行があり、その後夏にかけて沈静化しました。
  • 乳幼児では重症化することがあるため、引き続き家庭内での感染予防に注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、鼻汁、咳などのかぜ症状から始まり、乳幼児では急速に呼吸状態が悪化することがあります
  • 特に1歳未満の乳児や早産児、心疾患や肺疾患などの基礎疾患を持つお子さんでは重症化リスクが高いため注意が必要です。
  • ご家庭では、手洗い・マスク・換気などの基本的な感染対策に加え、同居家族からの持ち込みを防ぐ工夫も大切です。
  • 兄弟姉妹や保育園などを通じた家庭内感染が多いため、症状がある場合はできるだけ接触を避けましょう。
  • お子様の感染症と認識されることが多いですが、成人のかぜ症候群の腫瘍なウイルスとして知られています。本症のお子様との濃厚接触で成人も重症化するケースがあります

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期は2〜8日程度。鼻汁・咳・発熱などの上気道炎症状から始まり、乳幼児では細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
  • 乳児では喘鳴(ゼイゼイ)、陥没呼吸、哺乳不良、無呼吸発作などがみられる場合があり、「苦しそうな呼吸」は重症化のサインです。
  • 高熱が続く、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が摂れないなどの症状がある場合には早急な受診をご検討下さい。
  • 成人では軽症で済むことが多いですが、高齢者や免疫力が低下している方では重症化する可能性があります

溶連菌性咽頭炎

2024年11月から2025年10月までのA群溶連菌咽頭炎の報告数推移を示す折れ線グラフ。年を通じて40〜80件台で変動し、2025年初夏にやや増加。秋時点では横ばい傾向で推移している。

溶連菌性咽頭炎は、強い咽頭痛・高熱はあれど、咳が乏しいのが特徴的な、主にA群溶血性連鎖球菌による感染症です。
症状の強さもさることながら、合併症に留意が必要な点が日常的な感染症としては特徴的で、適切な対応を要します。

動向

  • 今週の報告数は55件で、前週(28件)から増加しました。
  • 直近では一時的に減少していましたが、今週は再びやや増加しています。
  • 短期的には、8月以降40〜60件台で上下を繰り返しており、全体としては横ばい傾向です。
  • 中期的には、2025年初夏にかけて70〜80件台の週もありましたが、その後はやや落ち着いた水準で推移しています。
  • 咽頭痛や発熱などの症状が特徴で、流行期は例年冬季にも見られるため、今後の季節変化に伴う動向に注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 喉の痛みや発熱がある場合は無理をせず休養し、学校や園は登校・登園を控えましょう。
  • 咳やくしゃみの際はティッシュや肘で口を覆い、手洗い・うがいを徹底してください。
  • 兄弟や家族内での感染拡大を防ぐため、食器やタオルの共用を避けましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 急性咽頭炎を呈し、咽頭痛・発熱・扁桃の白苔が典型的です。
  • 小児では「イチゴ舌」や発疹(猩紅熱様発疹)を伴うこともありますが、近年は典型的な発疹を欠く例もあります。
  • 抗菌薬治療により症状は速やかに改善しますが、放置すると急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症があるため、早期受診が推奨されます。

咽頭結膜熱

2024年11月から2025年10月までの咽頭結膜熱の報告数推移を示す折れ線グラフ。2025年6〜7月にかけて70件前後でピークを形成し、その後減少。秋以降は20〜30件台で小幅な増加を示している。

手足口病は、手のひら・足の裏の皮疹と口内炎をを呈する夏季に流行しやすい夏風邪の一つです。

動向

  • 今週の報告数は28件で、前週(18件)から増加しました。
  • 9月中は減少していましたが、ここ2週間はやや増加傾向にあります。
  • 短期的には、7月のピーク(70件前後)以降減少し、8〜9月に低下した後、現在は20〜30件台で推移しています。
  • 中期的には、春以降に徐々に増加し、初夏から夏季にかけて流行がみられました。
  • 夏季に多い疾患ですが、秋にも散発的な増加がみられることがあり、今後もしばらく注意が必要です。

ご家庭で気をつけたいこと

  • 発熱、咽頭痛、結膜の充血や目やになどの症状がみられます。
  • 発症初期は感染力が強く、家庭や学校内で広がることがあります。手洗い・タオルの共用を避けるなど、接触感染対策が重要です。
  • 体調が悪い時は無理をせず休養し、発熱や目の充血がある間は登校・登園を控えましょう。

臨床的特徴と受診の目安

  • 潜伏期はおおむね5〜7日で、発熱・咽頭痛・結膜炎を主徴とするアデノウイルス感染症です。
  • 高熱が3〜5日程度続くことがあり、目の充血や痛みを伴う場合には眼科受診が必要になることもあります。
  • 症状が強い場合や長引く場合、集団生活に復帰する前には医療機関での診断を受けることが望まれます。