芦屋市・西宮市・神戸市の感染症情報(6/19)

兵庫県感染症情報センターからリリースされている週報から芦屋市西宮市神戸市の情報をピックアップして集計したものを若干のコメントをつけて配信しています。

2025年5月上旬から6月中旬にかけての芦屋市・西宮市・神戸市における主要な感染症の週別報告数の推移グラフ。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎が直近で急増し、咽頭結膜熱と百日咳も高止まり。COVID-19と伝染性紅斑は横ばい傾向。インフルエンザと手足口病は報告数が少ない。

目次

百日咳

2024年7月から2025年6月中旬までの芦屋市・西宮市・神戸市における百日咳の週別報告数の推移グラフ。2025年2月頃から増加が始まり、4月から5月にかけて急激に上昇。6月以降はやや減少傾向だが、高水準を維持している。

兵庫県は47都道府県中で第5位の報告数と、憂慮すべき状況が続いています(「兵庫県の百日せき 感染状況|NHK 」)。

  • 前週の53件から47件とやや減少したものの、引き続き多い状況です。
  • 5月以降は高水準を維持しています。

百日咳は初期に風邪様の症状を呈し、徐々に特徴的な発作性の咳が出現します。
乳児では無呼吸発作を呈することもあり、早期の診断と治療が重症化の予防につながります。兄姉などからの家庭内感染にも注意が必要です。

最近の兵庫県データでは7〜8割が家庭内感染、残りが学校内での感染と推定されています。

  • 連続する短い咳に続けて、息を吸うときに「ヒュー」と音がする
  • 周囲に百日咳と診断された人やしつこい咳の人がいる
  • しつこい咳が続く乳幼児の同居者

上記に該当する場合は積極的に受診を御検討下さい。

咽頭結膜熱(プール熱)

2024年7月から2025年6月中旬までの芦屋市・西宮市・神戸市における咽頭結膜熱の週別報告数の推移グラフ。2024年後半は全体的に低水準で推移していたが、2025年4月以降に急増し、6月には60件近くまで達して過去1年間で最も高い値を記録している。

咽頭結膜熱(プール熱)は3大夏風邪の1つです。

  • 報告数は前週の44件から57件に増加。
  • 例年6月から夏季にかけて流行のピークに向かう傾向。

咽頭結膜熱は名前の通り、

  • 発熱
  • 咽頭炎…のどの痛み
  • 結膜炎…目の充血

を呈する、主に学童期までに好発する感染症です。

飛沫感染・接触感染により感染し、プール熱の俗称が示すようにプールにおいてはタオルや、プールの水が感染源となり得ると考えられています。
ただし、昨今はタオルを共有する機会が減ったり、プールの塩素濃度の適正化などによりプールを地盤とした流行はないようです。

インフルエンザのような迅速抗原検査キットがありますが、精度が十分とは言えず、陰性であっても咽頭結膜熱を否定し得ません(陽性の場合は高い精度で咽頭結膜熱と診断し得ます)。

溶連菌性咽頭炎

2024年7月から2025年6月中旬までの芦屋市・西宮市・神戸市におけるA群溶血性連鎖球菌咽頭炎(溶連菌性咽頭炎)の週別報告数の推移グラフ。2024年夏にかけて報告数は急減したが、その後は50〜80件前後で増減を繰り返し、2025年6月には再び増加傾向がみられる。

溶連菌性咽頭炎はこの1年間、かつてなかった高水準を維持し続けています。

  • 報告数は前週の41件から57件へ増加。
  • 引き続き高い水準で推移しています。

迅速検査だけで診断しにくいのが溶連菌性咽頭炎の難しさですが、

  • 強い喉の痛み
  • 高熱
  • 鼻水や咳が乏しい

といった条件が揃った時は受診されるのがいいでしょう。

伝染性紅斑(りんご病)

伝染性紅斑の過去1年間の報告数の推移グラフ。2023年秋から増加傾向にあり、2024年5〜6月にかけて急上昇。6月上旬には50件を超える報告数でややピーク感があるが、高止まりが続いている。

りんご病の名前で知られる伝染性紅斑は増加傾向が続いています。

  • 前週の50件から44件へやや減少。
  • 全体として高水準を維持しています。

妊婦さんへの感染では胎児への影響が懸念されるため、妊婦さんが感染するのは何としても防ぎたいところですが、伝染性紅斑がうつりやすいのは伝染性紅斑らしさが出る前の時期であるため、妊婦さんは十分な感染対策をなさって下さい

伝染性紅斑とは

別名「りんご病」といい、風邪症状+赤いほっぺたを呈するウイルス感染症です。
5年程度の周期性の流行を認める傾向があり、前回の当地での流行はまさに2019年末〜2020年2月頃でした。

大半の方にとっては大きな問題とならないものですが、合併症に留意が必要な方々がおられます。

合併症

胎児水腫
妊婦の感染を経て胎児が感染すると、胎児の体内に液体貯留しやすくなる胎児水腫という合併症をきたして専門医による管理・治療を要することがあります。
妊婦さんはマスク着用などの感染対策を十分になさって下さい。

骨髄無形成発作
溶血性貧血患者が感染すると、重度の貧血や、赤血球以外の血球減少を伴う汎血球減少症をきたすことがあります。

感染対策

りんご病を特徴づけるのはほっぺたの赤みですが、この症状を呈する時期には既に感染源になる時期を過ぎており、りんご病患者がごく身近で発生してからの対策は後手になります。
肝要なのは生活圏での流行の把握となり、特に妊婦さんは登園中のお子さんがおられましたら登園先の発生状況の把握に努めるなどして、ご自身の生活圏で発生があれば速やかに十分な対策をして下さい。

具体的な対策は飛沫感染対策・接触感染対策となりますので、マスク着用・手洗い励行をお勧め致します。

COVID-19

新型コロナウイルス(COVID-19)の過去1年間の報告数推移を示す折れ線グラフ。2023年7月下旬から急増し、8月初旬に約750件のピークを記録。その後は急激に減少し、年末から翌年3月にかけて一時的に小さな波が再燃。2024年5月以降はおおむね低水準で安定して推移している。
  • 報告数は前週の42件から49件に増加。
  • 直近8週間で見ると微増傾向が続いています。

急性上気道炎にとどまるものから、インフルエンザのような症状が強いケース、高齢者に多い入院を要するケース、一部で死亡するケースなど幅広い症状を認めるCOVID-19。

いわゆるLong-COVIDや、心血管関連疾患の発症リスクの増加など、中・長期的な問題も指摘されており、かからないのが望ましい感染症です。

手足口病

手足口病の過去1年間の報告数の推移グラフ。2023年7月下旬に800件近いピークを記録した後、急激に減少し、以降は冬季にかけて低水準で推移。2024年6月時点では報告数がわずかに増加している。
  • 前週の9件から10件とわずかに増加。
  • 徐々に夏季流行の初期段階に入っています。

主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、手・足・口腔内に小水疱を伴う発疹が出現します。乳幼児での発熱・食欲低下が主症状で、重症化は稀ですが、保育園・幼稚園での広がりに注意が必要です。