伝染性単核球症

伝染性単核症は、EBウイルスをはじめとするウイルス感染に伴い、発熱・咽頭痛・頚部リンパ節腫大・肝障害などをきたす感染症です。一般的に耳馴染みはないかもしれませんが臨床現場ではしばしば見かける日常的な感染症です。 本ページでは伝染性単核球症について簡単に解説しています。
  • 2023/04/01更新

最初にまとめ

  • EBウイルスをはじめとする様々なウイルス感染に伴う全身性疾患です
  • 発熱・咽頭痛・頚部リンパ節腫大などを比較的高頻度に認めます
  • 溶連菌性扁桃炎との見分けが重要です

感染

起因ウイルス

  • 起因ウイルスの大半は
  • EBウイルス(以下EBV)
  • ですが、その他
  • サイトメガロウイルス(以下CMV)
  • ヒト免疫不全ウイルス
  • HHV-6・アデノウイルス・B型肝炎ウイルス・単純ヘルペスウイルス…
  • など様々なウイルスが挙げられます。

    EBVは日常的に見られるウイルスで、20代以上の日本人の抗体保有率は90%を超えます(最近低下傾向があるようですが)。
    主な感染経路は唾液で”、kissing disease”として知られ、20〜30代に好発します。

    CMVも日常的に見られるウイルスで、以前はEBV同様に抗体保有率は80〜90%でしたが、近年になり低下しつつあります。
    主な感染経路は母乳・唾液などで、元々は乳幼児期に家庭内で感染するケースが多かったと考えられます。その他性行為・輸血などによるものが挙げられます。

症状

感染経路

  • 4〜6週間と比較的長い潜伏期間を経て
  • 発熱
  • 咽頭痛
  • リンパ節腫大
  • などで発症します。
    発熱は比較的高度で、38.0℃以上で1〜2週間続くことが多いとされます。

    また
  • 麻疹・風疹様などの皮疹
  • を伴うこともあります。

    似たような高熱・咽頭痛・頚部リンパ節腫大を来すものに溶連菌性扁桃炎があります。
    診察上も扁桃腫大などの所見が類似しますが、溶連菌性扁桃炎のキードラッグであるアンピシリンを伝染性単核症患者が服用すると高頻度に皮疹を生ずるとの報告があります。その他のペニシリン系・セフェム系でも皮疹の発生リスクがあると考えられ、伝染性単核症と溶連菌性扁桃炎の鑑別は適切に行う必要があります。

ポイント

  • 発熱・咽頭痛・リンパ節腫大で疑う
  • 安易な抗生剤の服用は避けましょう

診断

  • 血液検査で
  • 肝機能障害
  • リンパ球増多
  • 異型リンパ球
  • 特異的抗体
  • などを認めることがあります。

    インフルエンザや溶連菌性扁桃炎のように迅速抗原検査はありません

治療

  • 通常自力で治るため、対症療法が主体となります。

    また現時点で有効なワクチンはありません。