腋窩多汗症(わき汗)

腋窩多汗症…いわゆるわき汗です。 薄着の季節をがまんしながら過ごされる方も多い思われますが、現在保険適応の治療があります。 本ページでは腋窩多汗症について日本皮膚科学会のガイドラインに則して解説しています。
  • 2023/05/19公開

最初にまとめ

  • わき汗を疾病としてどう受け止めるかは様々な見解があるところですが、腋窩多汗症による生産性損失は1ヶ月あたり3,000億円、衛生用品コストは1年間あたり250億円にもなるという試算があり、単に見た目上や不快感という個人の問題にとどまりません。

    本症の治療は薄着の季節のQOLを改善し、腋窩多汗症があってもなくても同様に過ごせる事を目的とします。
  • 腋窩多汗症には様々な治療がありますが、保険適応の治療があります
  • 当クリニックでは外用療法を行っています

症状

  • 多汗症は文字通り汗を異常に多くかく疾患で、多汗を全身で認める全身性多汗症と一部で認める限局性多汗症に分けられます。
    皮膚科領域となるのは限局性多汗症で、多汗を認める部位はわき(腋窩)・手のひら(掌蹠)・足の裏(足底)です。

    わきのものは汗ジミの元になるなど、気になる方にとってはQOLにも関わるものとなります。

    なお腋臭症…いわゆるワキガもわきの汗腺と関連した悩み事ですが腋臭症が関連するのはアポクリン汗腺、腋窩多汗症が関連するのはエクリン汗腺で起因する汗腺が異なります。

原因

  • 「これが原因です」という単一の原因はこれまでのところ見つかっていません。

    いくつかの研究から遺伝的傾向がある可能性が示唆されており、家族のどなたかにわき汗があれば他の家族にもわき汗がある可能性があります。

診断

診断基準・重症度

診断基準

  • 発症が25歳以下である
  • 左右対称性に発汗がみられる
  • 睡眠中は発汗が止まっている
  • 1回/週以上の多汗のエピソードがある
  • 家族歴がみられる
  • それらにより日常生活に支障をきたす
  • 上記のうち2項目以上該当するものがあり、腋窩からの過剰な発汗が特段の原因なく6ヶ月以上認められる

重症度 HDSS

  • HDSS : Hyperhidrosis‌ disease‌ severity ‌scale
  • ① 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
  • ② 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
  • ③ 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  • ④ 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
  • ③、④を重症の指標とする

治療

治療推奨度について

  • 本ガイドラインでは各治療に推奨度が示されています。
  • 本項では推奨度Bの治療について解説します。

抗コリン外用薬

  • 保険適応があり当クリニックでも本療法を行っています

    発汗するためには神経から汗腺にシグナルが伝えられる必要があります。
    抗コリン外用薬は外用した薬剤が浸透して、神経からのシグナルの伝達を抑制して発汗を抑えます。

    製剤にはゲル剤と1回分がウェットティッシュ状になっているワイプ剤の2種類があります。

    副作用として、
  • のどの乾き
  • かすみ目
  • 排尿障害
  • 鼻の乾燥
  • ドライアイ
  • などがあることに注意が必要なのと、
  • 閉塞隅角緑内障
  • 前立腺肥大による排尿障害
  • がある方はこれらの症状を悪化させる恐れがあるため、本治療は適応外となります。

    緑内障で通院中の方は主治医に「『抗コリン薬』の服用は可能か」を必ずご確認下さい

塩化アルミニウム外用

  • 保険適応がなく当クリニックでは本療法は行っていません

    塩化アルミニウムなどが汗腺(汗管)を物理的に閉塞させることと、その結果汗腺の機能が消失することで発汗を抑えます。

    副作用として、
  • 刺激性接触性皮膚炎
  • などがあります。

A型ボツリヌス菌毒性製剤注射

  • 腋窩多汗症においては重症型に保険適応がありますが、現時点で当クリニックでは本療法は行っていません

    保険診療では斜頸や尖足などの神経筋疾患、自費診療ではいわゆるシワ取りなどで実績のある製剤です。
    抗コリン外用薬と同様に神経からのシグナルを抑制して発汗を抑えます。

参照

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