動脈硬化症

動脈硬化症は若いときはゴムホースのように柔軟だったのが血管壁の変性によって柔軟さがなくなったり、コブができるなどする病態です。 その結果として狭心症・心筋梗塞・脳卒中といった動脈硬化性疾患を合併し、死亡やQOL低下のリスクが高まることが問題となります。 原因としてしばしば生活習慣病などが挙げられますが、すべての人に平等に降りかかる加齢もまた原因として挙げられます。 本症を正しく理解して上手に付き合っていきましょう。
  • 2023/04/01更新

最初にまとめ

  • 動脈硬化症とは動脈壁が変性し、血栓形成や血流低下をきたしやすくなる疾患です
  • 脳卒中、狭心症・心筋梗塞、動脈瘤・動脈解離などの動脈硬化性疾患の発症リスクが高まります
  • 動脈硬化性疾患は死亡リスクはもとより、発症後のQOL低下のリスクも大きな疾患です
  • 動脈硬化症のリスクファクターに対して適切な対処・治療することが肝要です

動脈硬化症と動脈硬化性疾患

  • 動脈硬化症とは動脈壁が変性・変形した状態で、動脈硬化性疾患とは各臓器で動脈硬化症が生じた結果合併する疾患と理解し得ます。

動脈硬化性疾患に至る流れ

  • 動脈
  •  ↓<動脈壁の変性・変形>
  • 動脈硬化症
  •  ↓
  • 動脈硬化性疾患
    (脳卒中・心筋梗塞・大動脈瘤など)
  • 動脈硬化をきたすと動脈壁がもろくなったり、血栓を生じやすくなったり、血流が乏しくなるなどしやすくなります。
    その結果下流の臓器に血液が行き渡らなくなり重大な合併症を引き起こします。

リスクの高い動脈硬化性疾患

  • 代表的な動脈硬化性疾患として

脳の動脈硬化性疾患

  • 脳梗塞
  • 脳動脈瘤・くも膜下出血
  • 脳出血

心臓の動脈硬化性疾患

  • 狭心症
  • 心筋梗塞

大動脈の動脈硬化性疾患

  • 大動脈瘤
  • 動脈解離
  • 動脈破裂
  • などが挙げられます。

    これらは回復して完全に元通りの日常生活に復帰できることがある一方、様々な程度の後遺症により日常生活の変更を余儀なくされたり、場合によっては急死に至ることも稀ではない重大な合併症です。

QOLを損なう動脈硬化性疾患

  • やや耳馴染みの薄いものとして

その他の動脈硬化性疾患

  • 腎硬化症
  • 下肢閉塞性動脈硬化症
  • などが挙げられます。

    腎硬化症は腎臓の動脈硬化性疾患で腎機能低下をもたらします。
    腎機能低下が進行すると透析が必要となりますが、本症は透析導入となる原因疾患の第2〜3位に位置するものとなります。

    下肢閉塞性動脈硬化症は脚の動脈硬化性疾患で歩行障害や壊死をもたらします。

    いずれの疾患も慢性に経過しながらQOLを大きく損なっていく合併症です。

動脈硬化症・動脈硬化性疾患のリスクファクターと予防

リスクファクター

  • 下記のようなものが挙げられます。

疾患

  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満症

嗜好

  • 喫煙

その他

  • 加齢
  • 遺伝的要因
  • 疾患は主に生活習慣病ですのでこれらは喫煙と併せて是正可能なリスクファクターといえます。
    一方加齢や遺伝的要因といった是正不可能なリスクファクターもあります。

予防

  • 前項の是正可能なリスクファクターは適切に対処することでリスクを低減することが可能です。

    疾患ごとの各論はあるものの、おおまかに対処法は食事療法・運動療法・ 薬物療法に大別されます。
    各療法のポイントを下記に示します。

食事療法

  • 適切なカロリー制限
  • 塩分制限
  • 繊維質の摂取
  • 緑黄色野菜の摂取

運動療法

  • 有酸素運動の励行

薬物療法

  • 疾患ごとに定められた治療目標をクリアする適切な強度の治療
  • 薬物療法を受けられている場合、それにより治療目標をクリアしている/いないという病状を主治医と共有しましょう。
    生活習慣病は治療目標をクリアしてこそベネフィットが得られるものであり、クリアしていない場合は治療強度の適正化が必要です。

    生活習慣病は動脈硬化性疾患を併発しない限り自覚症状に乏しいため、とかく治療中断に陥りがちですが、
  • 何のために治療が必要なのかを理解し
  • 治療目標が達成されているかを受診時にチェックし
  • 主治医と二人三脚でサスティナブルなリスクマネージを実現して、快適な日常生活を遅れるよう努めましょう。