花粉症

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)について『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』に基づいてプライマリケアの視点から解説します。

最初にまとめ

  • 鼻水・クシャミの有無、鼻詰まりの有無、眼の症状の有無によって治療の方向性が決まります
  • 症状の重症度やお薬の効き具合によっては複数の薬剤の併用が必要になります
  • 薬剤以外の花粉対策も有効ですので抜かりなくしていきましょう

原因

  • 花粉症は花粉に対して不適切な免疫応答を起こす病気で、①感作、②発症という段階を経ます。

感作

  • 花粉に含まれる抗原が体内に入ると、これを異物として認識して免疫応答する体制が整うようになります。
    この体制が整うことを「感作」と言います。

    感作は全ての人に起こる訳ではなく、スギでは約50%に起こるとされています。

発症

  • 感作が成立すると、花粉に暴露されれば免疫応答が起こるようになります。
    応答の程度は人により様々で、応答の程度がわずかなら無症状にとどまります。
    感作された人のうち約50%が無症状、残り約50%が発症すると考えられています。

    感作されるかどうかや発症するかどうかは遺伝的因子や環境因子などいくつもの因子が関与すると考えられています。

病態

  • 前項で記した「免疫応答する体制が整う」というのは花粉に対する抗体が産生されるようになるということです。

    産生された抗体は肥満細胞と結合し、花粉が抗体に結合すると肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます

    鼻においては、ヒスタミンは主にくしゃみやはなみずなどの症状を、ロイコトリエンは鼻詰まりといった症状を引き起こします。
    また眼においてはかゆみ・充血・涙目といった症状を引き起こします。

症状

鼻の症状

  • クシャミ
  • 鼻水(鼻漏)
  • 鼻詰まり(鼻閉)

眼の症状

  • かゆみ
  • 涙目(流涙)
  • 充血(眼球結膜発赤)

その他の症状

  • のどのかゆみ
  • 皮膚のかゆみ
  • 下痢・熱つぼい感じ…

重症度

くしゃみ発作・鼻水(鼻漏)の重症度

【無症状】 0回
【軽 症】 1〜5回
【中等症】 6〜10回
【重 症】 11〜20回
【最重症】 21回以上

鼻詰まり(鼻閉)の重症度

【無症状】 鼻閉なし
【軽 症】 口呼吸は全くないが鼻閉あり
【中等症】 鼻閉が強く口呼吸が1日のうちときどきある
【重 症】 鼻閉が非常に強く口呼吸が1日のうちかなりの時間ある
【最重症】 1日中完全につまっている

治療

内服薬

第2世代抗ヒスタミン薬

  • 肥満細胞から放出されるヒスタミンによる作用を抑えます
  • その結果主にクシャミ・鼻水・かゆみを抑えます
  • 比較的即効性に優れます

抗ロイコトリエン薬

  • 肥満細胞から放出されるロイコトリエンによる作用を抑えます
  • その結果鼻詰まりを抑えます
  • 連用することで十分な効果を発揮するようになります

第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤

  • 自律神経系に作用して血管を収縮させます
  • その結果鼻詰まりを抑えます
  • 慎重な処方が必要な薬剤で、原則的に服用は短期間にとどめます

点鼻・点眼薬

鼻噴霧用ステロイド薬

  • 肥満細胞のケミカルメディエーター放出など、様々な免疫応答を抑制します
  • その結果クシャミ・鼻水・鼻詰まりを抑えます
  • 連用することで症状を強力に改善します

点眼用抗ヒスタミン薬

  • 眼において抗ヒスタミン作用を発揮します
  • その結果かゆみ・涙目・充血を抑えます
  • コンタクトレンズ着用される場合は薬剤を慎重に選択する必要があります
  • 内服薬は服用の手軽さや、抗ヒスタミン薬なら即効性に優位性があります。
    鼻噴霧用ステロイド薬は即効性は乏しいのですが、連用すると強い効果を発揮します。

    中等症以下なら内服薬で開始重症以上なら点鼻薬で開始し、 コントロール不十分なら他剤を追加していくのがいいでしょう。

    なお本ページでは
  • 専門性の高い治療(手術療法を含む)
  • 現在あまり使用されていない薬剤
  • については割愛し、プライマリケア領域に的を絞って記載しています。