花粉症

  • 花粉症は、スギやヒノキをはじめとする植物の花粉が原因となるアレルギー疾患で、日本では年々患者数が増加しています。

    症状が軽いうちは日常生活に大きな影響はありませんが、重症化すると睡眠障害や集中力の低下を引き起こし、仕事や学業のパフォーマンスを損なうことがあります。
    また、喘息やアトピー性皮膚炎を持つ方は、花粉症によって症状が悪化することもあります。

    治療薬の選択肢が多く、画一的な治療は満足度が低い結果になりがちです。
    当クリニックでは一人ひとりの生活環境や症状に応じた最適な治療を提供し、日常生活の質が向上するよう心がけています。
  • 本稿は原則的に「鼻アレルギー診療ガイドライン」に基づいて記載していますが、非医療者向けページとして学問的正確性よりも理解しやすさを優先した表現を用いています。
  • 2025/02/21更新

最初にまとめ

  • 花粉症は、スギやヒノキをはじめとする花粉によって引き起こされるアレルギー疾患です
  • 主な症状には、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・涙・目の充血などがあり、重症化すると日常生活に支障をきたすことがあります
  • また、喘息やアトピー性皮膚炎など、他のアレルギー疾患を悪化させることもあります
  • 当クリニックでは、診断から治療まで一貫して対応し、患者様一人ひとりに最適な治療をご提案いたします

原因

  • 代表的な花粉症の原因として以下のようなものがあります。

花粉症の原因

  • 春:スギ・ヒノキ
  • 夏:イネ科植物
  • 秋:ブタクサ・ヨモギ

病態

  • 病態を知ると自分に必要な治療が見えてきます。

感作(アレルギー反応の準備)

  • 花粉症には『感作』と呼ばれる準備段階があります。
    スギでは約50%の人が感作され、そのうち約50%の人が発症します。

感作

  • 花粉の体内への侵入
  •     
  • IgE抗体が産生される
  •     
  • IgE抗体は肥満細胞と結合して粘膜で待機

アレルギー反応

  • 花粉にさらされるとアレルギー反応が発生し、花粉症の症状を引き起こします。

アレルギー反応

  • アレルギー反応の発生
  • 花粉への暴露
  •    
  • 花粉とIgE抗体が結合
  •    
  • 肥満細胞が活性化
  •    
  • ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが放出
  • 身体への影響と症状
  • ヒスタミンが知覚神経を刺激  くしゃみかゆみ
  • 鼻腺・涙腺の分泌が増加  鼻水
  • 血管の拡張とむくみ  鼻づまり充血
  • LTs:ロイコトリエン
  • PGD2:プロスタグランジンD2
  • TXA2:トロンボキサンA2

症状

鼻の症状

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻づまり

目の症状

  • かゆみ
  • 充血

その他の症状

  • のどのかゆみ・違和感
  • 皮膚のかゆみ・アトピー性皮膚炎の悪化
  • 倦怠感・集中力の低下
  • のどの症状は、ヒスタミンによる知覚神経の刺激や、鼻水がのどに流れる(後鼻漏)ことによって起こります。
  • 鼻や皮膚で放出されたヒスタミンが原因となり、皮膚のかゆみやアトピー性皮膚炎を悪化させることもあります。
  • 倦怠感や集中力の低下は、鼻づまりやくしゃみによる睡眠の質の低下が影響しています。

症状のポイント

  • 以下の症状の有無を把握し、効果的な治療を受けましょう。
  • くしゃみ・鼻水
  • 鼻づまり
  • 目の症状

重症度

  • 重症度はお薬を決定するための指標となり、鼻水・くしゃみと、鼻づまりのそれぞれの度合いによって定められています。

鼻水・くしゃみの重症度

  • 無症状
0回
  • 軽症
1〜5回
  • 中等症
6〜10回
  • 重症
11〜20回
  • 最重症
21回以上

鼻づまりの重症度

  • 無症状
鼻づまりなし
  • 軽症
軽い鼻づまり/口呼吸はしない
  • 中等症
強い鼻づまり/口呼吸は時々
  • 重症
非常に強い鼻づまり/口呼吸は頻繁に
  • 最重症
1日中完全につまっている

治療

  • まずは各薬がどの症状に有効なのかを確認しましょう(近年あまり使われない薬など一部割愛しています)。
薬の種類効果の目安副作用
リスク
くしゃみ・鼻水鼻づまり
標準的
治療
内服薬第2世代抗ヒスタミン薬
抗LTs薬
抗PGD2・TXA2薬
点鼻薬鼻噴霧用ステロイド薬
点眼薬点眼用抗ヒスタミン薬
補助的
治療
内服薬第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤
経口ステロイド薬
点鼻薬点鼻用血管収縮薬
点眼薬点眼用ステロイド薬
効果の目安 ◯:
◎:
副作用リスク ◯:
▲:
有効
より有効
副作用リスクは低く、一般的な使用では問題になりにくい
副作用リスクはやや高く、適正な管理のもとで使用推奨

標準的な治療と補助的な治療

  • 標準的治療は優先すべき治療で、それだけでは不十分な時に上乗せするのが補助的治療です。
    補助的治療は有効性と引き換えに副作用のリスクがあるため漫然とは行わず、医師による適正な副作用チェックの元での使用が推奨されます。

軽症の治療

  • 症状に合わせて標準的治療から1種類の薬剤を使います。
  • 第2世代抗ヒスタミン薬
  • 抗ロイコトリエン薬
  • 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2
  • 鼻噴霧用ステロイド薬
  • 点眼用抗ヒスタミン薬

中等症の治療

  • 鼻噴霧用ステロイド薬に、他の1〜2種類の標準的治療や、第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤を併用します。

鼻水タイプ

  • 鼻噴霧用ステロイド薬
  • 第2世代抗ヒスタミン薬

鼻づまりタイプ①

  • 鼻噴霧用ステロイド薬
  • 第2世代抗ヒスタミン薬
  • 抗ロイコトリエン薬

鼻づまりタイプ②

  • 鼻噴霧用ステロイド薬
  • 第2世代抗ヒスタミン薬
  • 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2

鼻づまりタイプ③

  • 鼻噴霧用ステロイド薬
  • 第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤

結膜炎タイプ

  • 点眼用抗ヒスタミン薬

重症・最重症の治療

  • 中等症の治療を基本として、抗IgE抗体を併用します。
    鼻づまりタイプでは2週間程度の点鼻用血管収縮薬や、1週間程度の経口ステロイド薬の併用を検討することがあります。
    点眼用ステロイド薬は眼圧上昇のリスクがあるため、眼科医によるチェックのもとでの仕様が推奨されます。

鼻水タイプ

  • 中等症の治療
  • 抗IgE抗体

鼻づまりタイプ

  • 中等症の治療
  • 抗IgE抗体
  • 点鼻用血管収縮薬
  • 経口ステロイド薬

結膜炎タイプ

  • 点眼用抗ヒスタミン薬
  • or
  • 点眼用ステロイド薬

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

  • 花粉症では感作を経てアレルギーの引き金が引かれやすくなっています。
    これまでの治療引き金が引かれて起こる各種症状を抑制しようとするものであるのに対して、舌下免疫療法は引き金を引かれにくくしようとするものです。
  • 十分な効果を得るまでに通常3〜5年の治療期間を要すること
  • 必ずしも全ての方が寛解に至るわけではないこと
  • など、ややハードルは高めですが、1年の1/4を煩わしい症状で過ごすのを毎年繰り返すくらいならトライする価値はあるように思われます。

    治療開始は花粉症シーズン後からで、翌シーズンには症状の改善を自覚される方もしばしば見受けられます。

    具体的な用法は以下のようになっています。
  • 1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込む
  • なお、現在薬剤の流通制限のため、新規開始は制限されています。2025年11月頃から流通制限が緩和される見込みです。

花粉対策

  • 花粉を防ぐ工夫をすれば、症状の軽減につながります。
    ライフスタイルに合った対策を取り入れてみましょう。

出かけるときは

帰ってきたら

  • 衣服や髪の毛の花粉をよく払う

自宅での対策

  • こまめな掃除
  • 空気清浄機の活用
  • こまめな換気

花粉飛散情報

  • 花粉の飛散は時間帯によって変動します
    外出時間や換気時間の調整に花粉飛散情報を有効活用ましょう。

花粉がつきにくい服装

  • 花粉が付きにくく、払い落としやすい素材のものを選びましょう。
  • ポリエステルやナイロンなどの滑らかな素材
  • ウールやフリースなど花粉が付きやすい素材
  • また花粉を寄せ付けない工夫として
  • 撥水加工や静電気防止スプレー
  • なども効果的です。

花粉症かどうか自分で判断できますか?

  • くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが長引く場合は花粉症の可能性があります。ただし、風邪や他のアレルギー疾患と区別がつきにくいこともあるため、確実な診断のためには受診をおすすめします。
    進行の速さには個人差がありますが、基本的に対策をしなければ自然に改善することはほとんどありません。

いつから治療を始めるのが良いですか?

  • 近年、このトピックについての見解は流動的ですが、
    症状が出始め次第
    花粉の飛散が始まり次第
    といったあたりが主流になっており、以前提唱されていた「花粉シーズン前から」といった意見は古い見解になりつつあるようです。

市販薬と病院の薬は何が違いますか?

  • 市販品にも処方薬とほぼ同一の製品があり、こういった製品の効果はほぼ同じと考えていいでしょう。
    ただし症状にあった製品を的確に選ぶ必要があるのと、製品によっては副作用の観点から漫然と継続すべきではない成分が含まれているものもあり、薬剤の選択・副作用への配慮などの点からは受診&処方をお勧めしたいところです。

眠くならない薬はありますか?

  • はい、眠気の少ない第2世代抗ヒスタミン薬があります。お仕事や勉強に支障が出にくい薬を選ぶことができますので、診察時にご相談ください。
    眠くならない薬ほど効かないということもありません。

舌下免疫療法とはどんな治療ですか?

  • 花粉症の根本的な改善を目指す治療法です。体を徐々に花粉に慣れさせることで、アレルギー反応を軽減する効果が期待できます。
    開始できるのはスギ花粉シーズンが終わってからなので、興味のある方はシーズン後にご相談ください。

WEB予約はできますか?

  • はい、当院ではWEB予約が可能です。待ち時間の短縮にもつながりますので、ぜひご活用ください。
    WEB予約は こちらから

花粉症の症状がひどくなるとどうなりますか?

  • 重症化すると頭痛、倦怠感、集中力の低下、睡眠不足などが起こり、仕事や学業に影響を及ぼすことがあります。
    また喘息やアトピー性皮膚炎の悪化にもつながることがあるため、適切な治療が重要です。
  • 健康診断結果について、お気軽にご相談下さい