マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、特に学童を中心に発症する流行性肺炎の代表的なもので、発熱・頑固な咳嗽 を特徴とする感染性肺炎です。 教科書的には比較的特徴的な症状を呈する感染症と言えますが、発症初期はいわゆる風邪と判然としないことが多かったり、迅速抗原検査の精度が低いなど診断に苦慮することがあります。 感染者の半分以上は不顕性感染と言われており、必ずしも抗菌療法を要しませんが、発熱・咳嗽など症状が強い場合は抗菌療法が有効です。

最初にまとめ

  • しばしば学童を中心に流行する肺炎で、発熱・頑固な咳嗽 を特徴とする感染性肺炎です
  • 発症初期はいわゆる風邪っぽい症状にとどまったり、迅速抗原検査の精度が低いなど診断に苦慮することがあります
  • 感染者の半分以上は不顕性感染にとどまるなど、必ずしも抗菌療法を要しませんが、発熱・咳嗽など症状が強い場合は抗菌療法が有効です

感染

病原体

  • マイコプラズマは細胞壁を持たないという構造的特徴を持つ小型の細菌です。

感染

  • 飛沫感染や接触感染によって人から人へと感染し、学校などの集団単位で急速に拡大しますが、短時間の空間の共有で容易に拡大するわけではなく友人同士の接触のような比較的濃厚な接触が必要と考えられています。



    潜伏期間は2〜3週間で、発症当初は特徴的な咳を伴わないことがあります。

感染から発症

  • 潜伏期間はおよそ1〜2週間です。

症状

臨床経過

症状

発熱

  • カタル期に38.0℃前後
  • その後一旦37.0℃くらいまで低下
  • 更にその後39.5℃前後と全体で2峰性の発熱を呈する

発熱以外のカタル症状

  • くしゃみ・鼻汁・咳嗽などの風邪症状
  • 眼脂・結膜発赤などの結膜炎様症状

粘膜疹

  • カタル期終盤に、奥歯のあたりの頬粘膜に白い粒状のコプリック斑
  • 口腔粘膜の発赤
  • 口蓋部に溢血斑

皮疹

  • 前額部・耳介後部・頸部から出現
  • その後上肢・体幹部と下行性に拡大し、皮疹出現後2日ほどで下肢に及ぶ
  • 各個疹は当初は鮮紅色で扁平だが、次第に隆起・癒合して不整形の斑丘疹になる
  • その後暗赤色となり、拡大した順番で消失していく

合併症

  • 主な合併症として以下のようなものが挙げられます。
  • 中耳炎
  • 肺炎
  • 脳炎
  • SSPE(亜急性硬化性全脳炎)
  • SSPE(亜急性硬化性全脳炎)とは
  • 感染後7年程度の学童期になってから発症する致死性のの中枢神経系疾患
  • 進行性の知能障害、運動障害、錐体・錐体外路症状を呈し平均6〜9ヶ月で死亡に至る
  • 罹患者10万人当たり1人と頻度は高くないが避けるべき合併症

診断

  • 病原診断には
  • 麻疹IgM抗体
  • PCR
  • などが用いられますが、クリニック診療においては麻疹IgM抗体が用いられることが多いと思われます。
    ただし病原診断は結果判明に時間がかかります。本症は極めて感染力が強く迅速な対応が必要であり、周囲の発生状況・行動範囲などから本症を疑い
  • 特徴的な皮疹
  • 発熱
  • カタル症状
  • の3つの要件が揃えば臨床診断に至ります。

    なお、ワクチン接種の要不要の判定に用いられる麻疹IgG抗体と上記麻疹IgM抗体は異なるものです。

治療

  • 本症そのものに対しては、原則的には特異的な治療はなく対症療法を行います

抗菌療法

  • 中耳炎や細菌性肺炎を合併した場合は抗生剤による抗菌療法を行います。

予防

  • 手指衛生や一般的なマスクに有用性は期待できません。

ワクチン

  • 最も確立された予防法です。
  • 麻しん風しん混合ワクチン
  • 麻しんワクチン
  • 免疫獲得率は1回接種で93~95%以上、2回接種で97~99%以上と高く、定期接種導入後の発生報告数の推移は有効性の高さを示しています。

    国内の定期接種は
  • 1978年 麻しんワクチン1回接種開始
  • 1989〜1993年 一部でMMRワクチンによる定期接種が併行して実施
  • 2006年 麻しん風しん混合ワクチン2回接種開始
  • という変遷を経て現在に至ります。

    任意接種は麻しんワクチンの流通量が少ないためしばしば麻しん風しん混合ワクチンで代用されます。
    仮に風疹抗体価が高くても接種に特段の問題はありません。

緊急ワクチン接種・γグロブリン製剤

  • 患者と接触後3日以内にワクチン接種を行うと発症を予防できる可能性があります。
    また同様に接触後3〜5日以内にγグロブリン製剤投与を受けると発症を予防できる可能性があります。

    これらは非常に特殊な状況で行われるものです。

学校保健安全法における取り扱い

学校保健安全法における取り扱い

  • 解熱後3日を経過するまで出席停止